ほぼ足りてまだ欲 その先

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名古屋高裁

 今更ながらの話だけれど、名古屋高裁(審理担当青山邦夫裁判長(退官)、高田健一裁判長代読)が「派遣差し止めについては控訴人(原告)らに違憲な戦争の遂行や協力などを強制される事態にはなっていない」として棄却。ただし、現在のイラクの状況について「泥沼化していて、国際的な武力紛争が行われており、イラク特措法でいう戦闘地域である」と指摘。「他国による武力行使と一体化した行動であって、自らも武力の行使を行ったとの評価を受けざるを得ない」と述べ、「イラク特措法に違反し、かつ、憲法9条1項に違反する活動を含んでいる」と認定。原告側は上告せず、国側は勝訴だから上告ができないのでこのままこの判決が確定する。つまり、イラク特措法にも違反している行為だと司法が行政に対して「まちがっている」と判断したと云うことである。
 そもそも当時の小泉という首相は「どこが非戦闘地域で、どこが戦闘地域なのか、私に聞かれたって分かる訳がないでしょ!」と居直り、「自衛隊が活動している地域が非戦闘地域だ」なんて人を舐めきったとうべんをし、それでも「いいぞ!いいぞ!」と囃したてた連中がいたことは忘れちゃならないだろう。額賀という札付きのおじさんはその当時「バグダット地域全体が戦闘地域か非戦闘地域か、われわれは区別しているわけではない。飛行場は非戦闘地域である」と言い放ったという始末なんだから「おまえらいい加減にしろ!」と一喝されたってわけだ。高裁判決は「バグダッドは、国際的な武力紛争の一環として行われる、人を殺傷し、物を破壊する行為が現に行われている。イラク特措法にいう『戦闘地域』に該当する」と指摘。

  • 福田康夫「それは判断ですか。傍論。脇の論ね」「(空自の活動について)問題ないんだと思いますよ」
  • 増田好平防衛事務次官「(空自の活動を)今の時点で見直す考えはない」
  • 町村信孝官房長官武力行使の解釈について裁判官がどこまで実態が分かっているのか、(戦闘地域と判断する根拠となる)『国に準ずる組織』をどう理解しているのか、その辺に誤りがあるのではないかという印象をお互いに語った」
  • 高村外務大臣「一人の人(裁判官)の意見。外相を辞めて暇でもできたら読んでみる。崇高なものであるかのごとく錯覚を与えて政治利用しようとするのはよくない」
  • 石破防衛大臣「極めて遺憾だ。判決を導き出す立論過程で、(違憲判断が)論理構成上必要であったわけではない。傍論部分にすぎず、なぜあえて言及したのかやや理解しかねる」
  • 田母神(たもがみ)俊雄・航空幕僚長「『そんなのかんけえねえ』という状況」

 町村君の「国に準ずる組織」っていうのはなんのことを云っているのか私には理解ができていないのだけれども、これだけ行政のトップが司法に対して「無視」をしていこうとするこんな態度は中学校の社会科の授業でも全くの落第点だ。そもそも武装兵員を定期的に確実に輸送しているってのは戦争に送り込むためのものなんだというのは誰でも理解できるし、武装していると云うことは確実に武器を身につけている訳で武器弾薬を運んでいることにならないという解釈はどう考えても「不正解」なのは誰が聴いてもそう思う。言い含めれば言い含めた奴の勝ちなんだという考え方はまちがっていると云うことをはっきりと指摘していくべき。町村はやっぱり落第だ。
さて各紙は

  • 産経新聞社説:「イラクでの航空自衛隊の平和構築や復興支援活動を貶(おとし)めるきわめて問題のある高裁判断だ。」「傍論で違憲の疑義を表明することは、憲法訴訟のあり方から逸脱している。」「空自は平成16年3月から、クウェートを拠点にC130輸送機で陸自などの人員、物資をイラク南部に輸送してきた。一昨年に陸自が撤退後、輸送範囲をバグダッドなどに拡大し、現在、国連や多国籍軍の人員・物資を輸送している。政府は「バグダッドイラク特別措置法がうたう非戦闘地域の要件を満たしている」と主張しており、空自は当たり前の支援活動を行っているにすぎない。」:なにか混乱しているのだろうか。
  • 読売社説(080418):「イラクでの自衛隊の活動などに対する事実誤認や、法解釈の誤りがある。極めて問題の多い判決文である。」「こうした形の判例が残るのは、好ましいことではない。」「多国籍軍による武装勢力の掃討活動は、イラクの安定と安全への貢献を求めた2003年5月の国連安全保障理事会決議1483などを根拠としている。イラク政府も支持しており、正当な治安維持活動にほかならない。」「仮に掃討活動が武力行使だとしても、憲法上の問題はない。空自による多国籍軍兵の空輸は、武力行使と一体化しないから」:もう理解の限界を超えてしまった。
  • 毎日新聞(080418):「政府は、輸送の具体的な内容についても国民に明らかにすべきである。」「あいまいな説明は許されない」
  • 東京新聞(080418):「高裁が違憲とした以上、空自の輸送活動をこのまま継続することは難しく、撤退も視野に入れた検討が必要ではないか。福田政権にとっては、道路財源や高齢者医療の内政問題に加え、日米同盟にかかわる安全保障上の外交課題を背負うことになった。」「もう一つ、今回の違憲判決が明確にしたのは、自衛隊海外派遣と憲法九条の関係である。与党の中には、自衛隊の海外派遣を恒久法化しようという動きがある。しかし、九条が派遣でなく「派兵」への歯止めとなることを憲法判断は教えた。」
  • 北海道新聞(080418):「この判決を待つまでもなく、憲法九条は自衛隊の海外での武力行使を禁じている。だから九条は変えるべきだ、という声も出てくるかもしれない。しかし、それは逆だろう。九条は日本が平和国家を目指すという宣言である。各種世論調査でも九条を守ろうという国民の意識は強い。 」