ほぼ足りてまだ欲 その先

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同級生


 前にも書いたかもしれないけれど、高校の時の同級生が近所に住んでいる。
私はこの近辺に暮らし始めて48年くらいになるんだけれど、彼女以外に高校の同級生に出会ったことはない。
というよりも、わたしたちの高校の出身者がこの地域には多分私達二人以外にはいないだろう。
というのは私達の高校は品川区にあって、当時は第一学区だった。
しかし、今住んでいるこの地域は第五学区だったから、普通だったら全く縁がない。
高校在学中にこの地域に来たことはまったくなかった。
私達が卒業してから、都立高校は学区制から学校群になった。

ここ数年出逢うこともなかったけれど、今日は買い物から帰って来る道でその元同級生にばったりあった。
思わず旧姓で呼び止めた。
すると彼女は驚くことに「エェッと、名前なんてったっけ?」といったのだ。
以前まではあの頃のことを普通に語っていたし、前回なんかは、彼女が日直だった日に、私が「今日の食堂のメニューは何?」と聞いたといって文句をいっていた。「日直だからってそんなことを知っているわけないじゃないの!」と。深くお詫びをした記憶がある。

彼女が住んでいる家はわかっているけれど、突然訪ねていってまさか「お元気?」と聞くのもはばかられる。「私は高校の同級生ですが」といって訪ねていったら、多分家族の人にとってはとっても胡散臭い。だから家は知っているけれど、行ったことはない。
お子さんはお嬢ちゃんが三人だったそうで、今は末のお嬢ちゃんとその高校生の孫娘と四人暮らしだといっていた。
卒業アルバムも取り出せなくて、もう見ていない、といっていたから、今度お届けしてあげよう。

高校を卒業してからもう58年経った。みんな年老いた。