全く知らなかったのだけれど、昨日から明日まで新潟市で「G8労働相会議(労働サミット)」なるものが開かれているんだそうだ。この会議では連合の高木会長が日本の経営者サイドに相当激しく詰め寄ったらしい。その議論はその後の記者会見の席上にまで持ち越されたと今朝の朝日新聞は「時時刻刻」で取り上げている。これから要約してみるとざっとこんな感じだ。
松井一実・厚生労働総括審議官が記者会見でうまくこう纏めた。「格差が生じているという問題認識は、(政労使の)三者で共有できた。これから三者が話し合いを深める中で、具体策についての努力をしたい」
その時に高木は強い口調で割って入った。「好きで非正規労働者になっている人がいる、というとらえ方が(経営側に)あった。非正規雇用について規制緩和をすべきだという主張もあった。日本の労使は認識がえらく違う、という印象を各国に与えたはずだ。きちんと議論をすべきだ」
それに対して鈴木正一郎・日本経団連雇用委員長(王子製紙会長)は経団連が重視する規制緩和を提唱。「変化があると格差は生まれやすいが、だから変化を止めてしまうのではなく、起こった問題について良く議論することがわれわれのスタンスだ」
高木は日本の大手企業が派遣法違反を繰り返していたことも指摘。「それが一部だけとは言わせない。古い言葉で言えば、盗っ人猛々しいと言うことだ」。会見終了後も「ルールを守らない人間に正当性を主張する権利があるか」と憤りは続いた。
会合は非公開で2時間。日本の労使の対立はひときわ激しかったのだという。舛添は「日本には二つの違う意見がある。政府は両方の意見を聞いて政策を立てないといけない」ととりなしたんだという。
ところで、各紙はこの会議をどの様に取り上げているのかをちょっと見てみたい。
(2008年5月12日20時58分 読売新聞)新潟でG8労相会合、格差是正策など討議
新潟市での主要8か国(G8)労働相会合の本会合が12日始まり、グローバル化に伴う経済格差の是正策などを中心に討議した。
舛添厚生労働相は米低所得者向け住宅融資「サブプライムローン」問題や原油高騰などが雇用に与える影響に懸念を表明し、「各国の労働市場は大きなリスクを抱え、緊密に協働する必要がある」と訴えた。
各国代表は「経済のグローバル化は一定の恩恵は与えてくれるが、地域や労働者間に格差拡大を助長している」との認識で一致。働いても生活費を賄えない「ワーキングプア」が各国で社会問題化していることも採り上げられた。また、企業が求人時に求める技能水準が上昇し、求職者とのミスマッチが起きているとして、技能向上策の必要性も話し合われた。
一方、雇用のあり方を巡っては、「柔軟に労働者を雇えるよう解雇や社会保険の加入などに関する規制を緩和することが就業機会を増やす」との意見の一方、「規制緩和は非正規雇用の増加につながる」との見方も示された。
ま、はっきりいって大変におざなりな取り扱い方といっても良いだろうか。と、いってもどこもかしこも大体こんな程度の扱い方で、一歩踏み込むことをしないのは、日本経団連ににらまれたら広告出稿禁止が怖いというところなんだろうか。そうだとしたら朝日はどうするつもりなんだろうか。
NIKKEI.NET 20080512 12:31 インフレ、雇用に悪影響・G8労働相会合で討議
主要国首脳会議(洞爺湖サミット)の関連会合の1つで、新潟市で開催中の主要8カ国(G8)労働相会合は12日、議長総括をまとめるための本格的な討議に入った。舛添要一厚生労働相は世界経済の状況について「原油や一次産品価格の高騰に伴うインフレ圧力によって景気に下方リスクがある」と分析。参加各国もインフレ圧力が雇用情勢に悪影響を及ぼしつつあるとの認識で一致した。
厚労相はこのほか「私募投資ファンドの動きが雇用に与える影響も懸念される」と述べ、投資ファンドが企業を買収した後に従業員の人員削減を強行したり、労働条件を引き下げたりすることに危機感を表明した。
12日午前の討議には上川陽子少子化担当相も加わり、「長寿社会」における高齢者の社会参加などについて話し合った。
さすが日経である。「インフレ圧力による景気下方リスク」という警鐘はがんがん鳴らしていくことになるんだろう。全世界レベルでの景気の下方傾向という脅しは効くだろうなぁ。
連合はひと頃非正規雇用労働者に対して全く彼らを視野の中に入れていないとして大変に批判を浴びてきた。そこから舵を切り直してきていたけれど、それでも私はまだ信用ができないできた。時代の流れに途中まで気がつかなかった労働組合なんて何の意味も持たず、組合加入率が減少したってしょうがないと思っていた。ひょっとすると彼らもそこに気付いてこうスタンスを構え直したのかも知れないが、それでもこの姿勢は良いのではないかと思う。