ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

素人とプロ

 曙橋にあるライブハウスにかつて寺尾聰がメンバーの一人だったThe Savageというバンドのライブがあると云って友達から誘われて出かけた。このバンドはエレキブームが華やかになりはじめた頃、「勝ち抜きエレキ合戦」というテレビ番組に出てきて見事10週間勝ち抜いてチャンピオンになった。
 当時多くのバンドがヴェンチャーズ系の曲を演奏するのに、彼等はシャドウズを演奏し、しかもその完成度がとても高くて舌を巻いたものだった。多分、大変に恵まれた環境に育ったんだろうと思わせたのは私たちではとても手に入らない楽器を揃えていたことにもあったけれど、その余裕にあった。それでも今回のライブのしゃべりで彼等とて最初はヴェンチャーズから始まったということがわかってなんだか納得したというか、がっかりしたというか。
 今回誘ってくれた友人は昔一緒にビートルズヴェンチャーズをやっていた仲間だけれど、今は彼の地元の仲間とシャドウズを楽しんでいるので、それもあってのことだった。
 さすがに寺尾はいないけれど、シャドウズをやらせるとそりゃ昔取った杵柄で良い音を出していて楽器もそろいのBurnes。しかし、こりゃ上手いなぁと思わせたのはかつてはローディーだったというドラムスだった。
 なにしろ唄はヒットしたものが2-3曲あったものの当時からなんて唄だ、と思わせていた程度だから声も出なくなった還暦後となってはそれは惨憺たる有様。それでも懐メロバンドという奴は懐かしさに心が震え、そうだ、あの頃の気持ちにかえってまたひと頑張りしようじゃないか、という気持ちにさせてくれるという役割がある。しかし、このバンドにはそれがない。
 だらだらしたマイク乗りの悪いしゃべりと、楽屋落ちと脈略のないゲスト。この種のバンドとしてのライブ会場の選択の間違いということもあるだろう。途中で客が減っていったことがそれを如実に表している。何人かタレントおばさんも来ていたけれど、これが自分たちが切符を手売りした箱借りのライブだったら私だってこの状況を許すだろう。そういう時は来る人たちはみんな出演者の支持者だからだ。
 それを一般客からチャージを取ってプロとして出演するのはあまりにも失礼だし、彼等がこの店に2年に一回の出演しか声がかからないというのは当然のことだろう。定評のあるライブハウスには実は既にレベルの高い音楽を提供するという責務が存在する。定評のあるレーベルにはそれなりの実力を持った音楽を提供するという職務があるように。
 昔の名前で出ていてもただそれだけのバンドもあるし、聴衆に元気を与えてくれる音楽を提供するという本来の役割を果たすバンドもいる。
 そういえばこの夜はそんな日だったのか、知り合いが自己満足のためにやっているバンドも私鉄沿線でチャージを取った演奏をやったらしくて、最近はそんなのがはやりなのか。