ほぼ足りてまだ欲 その先

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どこがいけない

 生まれた時には確かに両親はいたはずだ。だから生まれた。学校に行き始めた頃から別段、運動神経が活発なわけでもなかったし、歌が歌えたわけでもないし、漢字の書き取りが人よりたくさんできたわけでもないし、黒板に出ていって割り算を解くのが得意だったわけでもない。いつでも、何をやらせても人より良くできるわけでもないし、早くできるわけでもないし、綺麗にできるわけでもない。反省会で手を挙げて発言するわけでもないし、誰かに褒められるわけでもない。大きくなるに従って何か得意なことが見つかるわけでもないし、夏休みの宿題なんて巧い字じゃないけれど、一日分に3-4行しか書いてない絵日記も色がついていればましな方だった。
 高校は受験生が定員を下回る様な学校だったけれど、そこでも別に目立つわけでもなかったから、悪いこともそれなりだったけれど、警察にやっかいになるわけじゃなかった。卒業してから近所のコンビニで夜中の店番の仕事をやったのだけれど、容量がよいわけでもなくて、愛想がいいわけでもないから、段々店の中でも厄介者扱いされる様になって結局やめてしまった。
 それでも生きている。それでも普通に(多分)生きている。でも、お金を稼ぐことができないんだけれど、だからってどこがいけない?俺が悪い?なんで俺が悪い?それでもどうしたら良いのかわからない。
 普通に生きている人が普通に暮らしていけない時、人はどうしたら良いのか。なにか良いところを持っている人にならなきゃいけないのか。そうでないと暮らしていちゃいけないのか。
 人間は人間として存在していると云うことだけでもう既に人間なんだと云うことで良いのじゃないのか。「自分」を見付けなくちゃいけないのか。