ほぼ足りてまだ欲 その先

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野球見物

 うちの死んだとっつぁんは野球が殊の外好きだった、というと特別みたいだけれど、あの世代はみんな野球が好きだった。というよりは戦後の楽しみといったら野球見物くらいしかない。何しろ夜になってナイターなんてものがプロ野球がやっていたから、夕方路地を歩くと方々の家のラジオから野球中継の声が聞こえてきたものだった。
 とっつぁんが通っていた仕事は朝鮮戦争特需となって忙しくて、いつ帰ることができるのか不定期でわからない。帰れるとなると電話が掛かってきて、「ナイターに行くぞ」と車に乗って帰ってきた。すぐさま準備をして、うちを出て途中のいつもの鮨屋助六の折をあつらえて、野球場へ繰り込む。今から考えてみればコンクリートの打ちっ放しの野球場の階段を上がると、そこにはぽっかりとスタンドへ行く口が開いていて、そこから見える景色はそれはそれは見事に美しい芝生の緑と内野の土が照明に映えているグラウンドだ。いやが上にもワクワクする景色だった。硬球を捉える木のバットの「カシッ」という音。ブルペンのキャッチャーのミットに収まる「パシンッ」という音。場内アナウンスが聞こえる。ベンチにいるボールボーイが羨ましくてならなかった。あれを一度で良いからやってみたかったなぁ。
 横浜には「横浜平和球場」という野球場があった。外野は神宮のように芝生席といってまるでピクニックランドである。川崎には大洋ホエールズの本拠地の球場があった。東映フライヤーズの本拠地、駒沢球場には行ったことはなかったなぁ。