生きるということはひとつに「食べる」ということと同意語であって、これは人間だけでなくて動物全部に共通する。食べなくちゃ生きられない。しかし、食べるということにこれほど貪欲なのは人間だけかもしれない。うちの先住猫は成人猫用の餌をきらって、新参猫用の青年用餌ばかり食べたがるから、まぁ、選択をしているんだろうが。
しかし、貪欲でいられるのは金銭的余裕があって、時間的余裕があって、身体的自由がきかなくてはそうはいかないという実に残酷な状況である。
それが揃わない状態ではどこかで折り合いをつけなくてはならない。新鮮な刺身を絶妙なタイミングで食すことができるか、好みの牛肉を巧く焼いて、絶妙なソース、あるいは塩胡椒加減で喰うことができるか、といったらなかなかそう巧くはいかない。自ら走り回って誂えることは素人にはなかなかそうはいかない。
あれも喰ってみたい、これも喰ってみたい、とは思うが、そうはいかない。あれもこれも食べられずに一生を終えるだろうなと想像できる食材や料理はたくさん思いつく。
そんなことを思うことができるだけでも、恵まれている。