ほぼ足りてまだ欲 その先

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無国籍訴訟

判決の主旨からみるとこの部分は明解だ。

規定が設けられた1984年当時には父母の結婚をその結び付きとみることに相応の理由があったので、要件と立法目的の合理的関連もあった。
 しかし家族生活や親子関係に対するその後の意識の変化や実態の多様化を考えれば、この要件は今日の実態に適さない。諸外国でも法改正などで婚外子への法的差別を解消する方向にあり、もはやこの要件と立法目的との間に合理的関連を見いだすのは困難だ。
 日本人の両親から生まれた嫡出子らは生まれながらに日本国籍が得られるが、同じく日本人を血統上の親に持ち、法律上の親子関係があっても、父母が結婚していない婚外子だけは届け出によっても日本国籍を得ることができない。日本国籍の取得は基本的人権の保障を受ける上で重要な意味を持つことから、この差別で受ける不利益は看過しがたく、立法目的との関連性も見いだし難い。
 したがってこの規定は今日、立法目的と合理的関連が認められる範囲を著しく超える手段で、不合理な差別を生じさせているといわざるを得ない。遅くとも2003年に原告が法相あてに国籍取得届を提出した時点では、この区別は立法府裁量権を考えても不合理な差別になっており、国籍法の規定は憲法14条1項に違反していた。(2008/06/04 18:59 【共同通信】)

 ということは法を時代の変化に合わせて実状にあった様に対応させていくという努力を立法府はその義務として抱えているということであって、立法府の怠慢があったと指摘しているということではないだろうか。
 ちなみに反対意見を提示した5人の裁判官はこのように意見している。

横尾和子(昭和39年国際基督教大学教養学部卒業・元厚生官僚)、津野修(昭和37年京都大学法学部卒業・元大蔵官僚)、古田佑紀(昭和42年東京大学法学部卒業)裁判官の反対意見】
 家族の生活状況に顕著な変化があるとも思われない。西欧を中心に非婚でも国籍取得を認める例が多くなっているが、わが国とは社会状況が大きく違う。婚外子の場合は帰化制度が合理的で、条件も大幅に緩和されていることなどから、規定は合憲。仮に違憲としても、認知を受けた子全般に拡大するのは条文の用語や趣旨の解釈の域を超えている。
 【甲斐中辰夫(昭和37年中央大学法学部卒業)、堀籠幸男(昭和39年東京大学法学部卒業)裁判官の反対意見】
 国籍法が規定する要件を満たさない場合、国籍取得との関係では白紙の状態が存在するにすぎず、婚外子については、立法不存在、立法不作為の状態であるにすぎない。この状態は違憲だが、規定自体は合憲で、多数意見は法解釈の限界を超えている。違憲状態の是正は国会の立法措置によるのが憲法の原則だ。(同上記事)

 法律については門外漢の私が云うのもなんだけれど、この辺の反対意見は前者はあまりにも頑なだし、後者は技術論でしかない。こんな云い方は自分が大っきらいな云い方だけれども、文字に埋もれてしまった結果の様な気がするということだ。頭の良い人なんだなぁ、きっと。