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産経新聞 外国人

 msn産経ニュースにこんな記事が出ている。

原発怖い」永住中国人妻ら 子供置き去りで帰国相次ぐ msn産経ニュース 2011.3.26 01:20
 東日本大震災による東京電力福島第1原発放射性物質放射能)漏れ事故を受け、政府の指示を超えて自主避難が広がるなか、生活保護を受ける外国人が日本人との間に生まれた子供を置き去りにして帰国するケースが相次いでいることが分かった。福祉現場からは「児童虐待のネグレクト(育児放棄)に当たる」と懸念の声が上がっている。
 原発から150キロ圏にある関東地方の市の福祉事務所へ今月18日、生活保護を受給する中国籍の40代の母親から電話があった。
 「成田空港にいる。祖父が危篤なので帰国する」
 担当者が自宅を訪ね、高2の長男と中2の次男に事情を聴いたところ、母親は「原発が怖い」と中国へ帰ったことが分かった。2人は児童相談所が介入し、離婚した父方の祖母宅へ身を寄せたという。
 この福祉事務所が全国の福祉事務所の仲間内で調べたところ、生活保護を受給する外国人の帰国は少なくとも東日本の84事務所で64件に上った。中国、韓国、フィリピン、タイ人などで、中国人が最も多かった。永住者資格などを取得後に日本人男性と離婚した母子家庭や単身女性がほとんどを占め、子供と帰国した人が多い一方、友人の中国人や日本人へ預けて単身で帰国したり、子供を置き去りにしたケースも少なくないという。
 担当者は「皆一様に『祖父母が危篤で』と言う。ただ申告するのは良心的なほうで、黙って帰国するほうが多く実態がつかめない」と話す。申告がない場合、数カ月に1度の定期訪問まで帰国の事実が分からず、保護費が口座へ振り込まれ続けることになる。帰国の旅費も保護費をためた貯金でまかなっているという。
 生活保護法上の受給対象は日本国籍者だが、厚生労働省の見解では「人道的見地から永住者や定住者、日本人の配偶者等の在留資格を持つなど一定要件を満たす者は受給できる」(保護課)といい、平成21年度に世帯主が外国籍で生活保護を受けた人は6万952人に上った。保護費は全額が税金でまかなわれている。
 担当者は「永住権というのは永住を前提にしているはずなのに、帰国するのでは永住とは言えない。国は出入国管理などを適正化してほしい」と訴えた。
 生活保護問題に詳しい森川清弁護士(50)は「法的に問題はないが、子供を置いて逃げるといった行動が反発を招いているのだと思う」と指摘する。

 まぁ、マスコミ・リテラシー(そんなことばがあるとしてだけれど)をお持ちの方はこの記事が産経が書いているのだから、眉に唾して、5割方さっ引いて聴かなきゃならないという感覚を持ちながら読むだろうけれど、そうでない人たちは中国、韓国、フィリピン、タイから日本へお嫁に来て、離婚したり未婚で、母子家庭の母親はみんな、日本への永住資格を取るために日本に来て結婚し、この際怖くなったら、子どもを放りだして、逃げちゃったんだ!ひどい奴らだ、だから外国人を日本に入れちゃいかん、出て行け、といわんばかりの記事に読める。「そんなことはどこにも書いていない、よく読め。非国民!」という声が聞こえてくるんだろうなぁ。
 この論調は日の丸を押し立てて「外国人は出ていけ!」と叫ぶグループの論調そのものだ。この記事に引用されているデーターは以下。

  • 「平成21年度世帯主が外国籍で生活保護を受けた人:60,952人」:世帯主が外国人である世帯というのが全部でどれほどの数なのか、というデーターがない。
  • 「東日本の84の福祉事務所で64件の生活保護を受給する外国人の帰国」:これを調べたのが「全国の福祉事務所の仲間内で調べた」という数字だという。北海道だけでもほぼ70カ所の福祉事務所が存在するというのに、この表現では東日本の福祉事務所の大半でこんなにたくさんの生活保護所帯の外国人が子どもを放りだして帰っちゃったと読めないこともないという実にうまい誘導なんである。だれも福祉事務所の数なんて数えやしないよ、という姿勢が浮き上がる。

 この問題の背景には大きな問題が存在している。日本の過疎が問題になってきた地方には家庭を築くことのできなかった本当に多くの農業後継者、漁業後継者、林業後継者が存在していたし、今でも存在している。その根本的な境遇を創り出したのはどの様な歴史だったのか、そしてそこにどんな状況が展開されてきたのか。それを一体誰がどの様に支援してきたというのか。産経新聞グループはそんな状況をどれほど社会に訴えてきたのか。日本の農業、漁業、林業は日本という国の根底を支えてきたのであり、グローバリズムの流れで簡単に粉砕されてはならないものだという視点は彼等にとっても重要な視点ではないのか。
 確かに、「永住権だけ」を手に入れようと海外の斡旋ブローカーを利用し、それと日本の暴力団の繋がりを利用してやってきた人たちもいるだろうし、こんなおっかない国だとは思わなかったから、トンズラを扱いた輩もいるかもしれない。しかし、それが外国籍で永住権を持つひとり親世帯の大半なんだという印象を持たせようとする恣意的なスタンスを許すことはできない。
森川清[モリカワキヨシ]1961年東京都に生まれる。1984東京大学法学部卒業。1984年から1986年まで川崎製鉄株式会社勤務。1988年から2002年まで葛飾区福祉事務所にてケースワーカー。2003年弁護士登録。日弁連第49回人権擁護大会シンポジウム「現代日本の貧困と生存権保障」実行委員、同第51回人権擁護大学シンポジウム「労働と貧困」事務局次長を務める。現在、日弁連貧困と人権に関する委員会事務局次長、首都圏生活保護支援法律家ネットワーク事務局長など