ほぼ足りてまだ欲 その先

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共通点

 保阪正康安倍晋三東條英機に似ているといっている。

保阪正康氏。「サンデー毎日」(毎日新聞社)2月14日号に掲載された半藤一利氏、青木理氏との座談会で、保阪氏は、“歴代の自民党政党と現政権を比べたときの差異は?”という質問に対して、“占領期、戦後の総理はバランスや自制をわきまえていた”、“二度と戦争を繰り返すまいという共通認識があった”とした上で、こう述べているのだ。
 戦前回帰的政策をつぎつぎと打ち出す安倍首相と、1941年に近衛内閣の後を継いで日米開戦に突っ込んだ“A級戦犯”の東条には、しばしば類似性を指摘する声があがってきたが、保阪氏によると、両者は言葉遣いまで似ているという。(リテラ2016.02.19)こちら

日刊ゲンダイ保阪正康氏が語る<上>「慰安婦を巡る日韓合意は野合です」2016年2月8日

戦後70年談話は歴史に対する侮辱
 歴史作家の保阪正康氏(76)は「安倍首相の無知が怖い」と言った。昨年暮れの日韓合意、戦後70年談話などについて話していた時だ。その際、比較対象として出てきたのが天皇終戦記念日の言葉だった。浅薄で無知な安倍。生まれたときから、先の戦争と向き合ってきた天皇。その違いに言及したのが「天皇のイングリッシュ」(廣済堂新書)という保阪氏の最新著である。インタビューは天皇歴史観から安倍政権の歴史修正主義、軍隊と性の問題まで縦横無尽に広がった。
――まず、「天皇のイングリッシュ」という本について、説明させてください。天皇は昨年、パラオに行った。先週はフィリピンに行って、深々と頭を下げた。先の戦争で犠牲になった人々に対して、国籍を問わず、追悼・慰霊する天皇の言動の原点はどこにあるのか。この本は、天皇に英語を教えたバイニング女史を通じて、解き明かしていく。このタイミングで、こうした本を書かれたのは、やはり安倍政権の持つ危うさ、それに対する警鐘のような意味があるのでしょうか?
 天皇は平成の背広、帽子をかぶっていますが、頭の中は昭和の戦争の総括、謝罪、追悼、慰霊を自らに課している。私はいま日本でもっとも戦争責任を問うているのは天皇だと思った。天皇の頭の中に、民主主義的な思考、発想がどういう形で出来上がったのか。一度、整理したかったというのがあります。英語教師として、GHQから招かれたバイニング夫人は当時は皇太子だった天皇に、英語を教える。その際、使った副読本の原書を編集部が手に入れてくれた。これも大きな執筆動機になりました。
――くしくも、昨年は戦後70年で、安倍談話などが注目を集めた。談話は一応、謝罪、反省は踏襲しているが、主語が曖昧である、と批判された。あれは本心の謝罪ではない。天皇と比較して、そうした見方がネット上でも広がりました。
 あの文章は半年、1年の単位で考えれば、「よかった」となる。安倍首相は「村山談話の上書きでは意味がない」みたいなことを言っていたのに、一応踏襲したわけですから。でも、あれは小学生に「この言葉を使って作文を書きなさい」と言って、「よく書けましたね」というレベルだと思います。つまり、5年、10年経ったときに何の意味も持たない談話だと思う。歴史的遡及点が何もないからです。あの文章は今後、確実に恥をかく。歴史に対して、あまりにも軽く、生真面目さを欠くからです。私は、あの談話は戦後70年に対する侮辱だと思いました。
――安倍首相と天皇との歴史認識の比較は非常に興味深いものがありますね。
 私は平成という時代の中で、戦後民主主義そのものが音を立ててガタガタと崩れる感じがしています。それを守る姿勢を明確にしているのが天皇ではないか。お辞儀も同行記者などによると5秒、10秒じゃないんですね。
――一方、安倍首相は真摯に深いお辞儀をしているとは思えない。昨年暮れに従軍慰安婦を巡る日韓合意をしました。「最終的不可逆的」と安倍首相は自画自賛をしていますが、どういう評価を下されますか?
 あれは韓国の朴大統領も問題だと思いますよ。言葉は悪いが野合です。
――歴史的検証をしたうえで、合意したわけじゃないからですか?
 その通りです。戦後の昭和史研究というのは戦犯になるのを恐れた人々が焼き捨てた資料を収集することから始まったんです。資料を集めて、パズルのようにはめ込みながら、資料を分析し、一つ一つの事実を定着させていった。そこには膨大なエネルギーがありました。
――従軍慰安婦の問題では、そういう作業がないがしろにされている?
 この国では15年、20年くらい前から歴史修正という奇妙な動きが出てきた。勝手に大東亜戦争は聖戦であったという旗を立てて、聞いたこともないような説とか資料を集めてきて、「どうだ、聖戦だろう?」と言う。戦後70年間、ジャーナリズムとアカデミズムがコツコツ集めて築き上げてきた真面目な史実に対して、最初から「日本は侵略していない」という前提に立ち、どこかに資料はないか、見つけたとやる。そりゃ、歴史修正主義はどこの国にもあります。ドイツだって、「アウシュビッツはなかった」という人がいる。でも、ドイツでそれを言うのは犯罪です。ところが、日本の場合、歴史修正主義と権力が一体化した。そこが特異であって、問題なのです。
立論をせずに慰安婦像の撤去要求は筋違い
――従軍慰安婦についても「どこの国にもあった」「あれは職業だった」と安倍首相は過去に言った。いまだに安倍首相のお友達はそういう言動を繰り返しています。
 私は朝日新聞の吉田報道検証の際に、第三者委員会の委員をやりました。その時も申し上げたが、論じ方が間違っているんです。朝日がどうの吉田がどうの、というのは小さな問題で、本線ではない。問題の本質は軍隊と性なんです。
――というと?
 軍隊にとって、最も怖いのは性病なんです。100人の軍隊で1人が性病になったら、あっという間に広まってしまう。だから、性病管理のために師団長が慰安所をつくることを決める。主計将校が地元のイギリス人の大邸宅かなんかを慰安所にして、女衒に頼んで、女を集めさせる。兵隊の相手をさせるまえに軍医が性病検査をする。これが軍隊の常識です。
――軍が組織的、直接的に関与するわけですね?
 陸軍大学校でも性病にかからせるな、そのためにどうすればいいかを教えます。それをやらなければ、軍隊は潰れちゃう。師団長や部隊長、主計将校と軍医のトライアングルの中で、慰安所建設は進んできたのです。海軍主計士官だった中曽根康弘氏が発言したと聞いています。しかし、戦後、彼らは日本社会においてアッパークラスになっていく。そうした中で、慰安所建設の話はトライアングルの中で密閉化されてきたのです。だから、このトライアングルを開けなければ、従軍慰安婦の真相はわからない。私は当時、軍医だった人からいろいろな話を聞きました。インドネシアでは、14、15歳の子がやってきた。こんな子に性病検査は意味がない。処女だからです。軍医が「ここがどういうところか、知っているのか」「帰りなさい」と諭すと、「ここに来れば、三度の食事ができる」「衣服もある」「帰れば憲兵に殺される」――こう言ったというんですね。こういう史実をきちんと立論しなければいけないのです。
――職業売春婦とは全く違う?
 韓国の日本大使館前には従軍慰安婦の像がある。日本は撤去してくれと言うが、あれは民間が建てたものでしょ? どけたいのであれば、歴史的事実を立論して、悪いものは悪いと言えばいい。きちんと弁明すべきところは弁明したうえで、撤去を申し入れればいいのです。しかし、立論を抜きにして、何とかしろと言うのは違うし、慰安婦像の撤去が重大事になっているところからして、おかしいのです。
――軍隊と性といえば、他国はどうだったんですか?
 第2次世界大戦では米国がノルマンディーに上陸したあと、時のフランス政府が米兵のために慰安所をつくろうとした。でも、本国の婦人団体が強烈に反対するんですね。日本でも進駐軍を迎えたあと、時の政権が「慰安所で婦女子の貞操が守れるのであれば安いものだ」とか言って、設営しようとしたが、米国の婦人団体の反対によって潰された歴史があります。慰安婦に対する考え方は国によって違う。民主主義の成熟度によって、変わるのです。
――だとすると、当時の日本はどうだったんですか?
 ドイツと日本、ロシアはむちゃくちゃだったと思いますよ。

 日刊ゲンダイ 保阪正康氏が語る<下>「安倍政権は戦前と同じ行政独裁」2016年2月22日

東条英樹によく似ています
「今の時代は戦前の独裁政治と同じになりつつある」――。歴史と真正面に向き合ってきたノンフィクション作家の保阪正康氏(76)はこう言った。安倍政治の右傾化、言論への圧迫、そして何よりも立憲主義を理解せず、踏みにじる姿勢に息苦しさや懸念を感じている国民は多いが、「戦前の独裁政治と同じ」とは強烈な表現だ。昭和史を徹底的に研究、見つめてきた保阪氏のインタビュー第2弾――。
――先日、民主党階猛議員が安倍首相に「(自民党憲法改正草案は)表現の自由を制限し、言論機関を萎縮させる」と質問しました。安倍首相は「帰りに日刊ゲンダイでも読んでくださいよ」と言っていましたが、直後に高市総務相は放送局への電波停止命令があり得ることを公言した。ますます、テレビメディアは萎縮していくようで怖くなります。
 戦前の政治家で安倍首相に一番似ているのが、開戦時の首相だった東条英機だと思いますよ。安倍さんは国会の答弁でよく“私が責任者ですから”と言うでしょう? あれは東条の言い方と同じなんですよ。政治権力の頂点にいる者が威張り散らすときの言葉で、東条は“俺に逆らうな”という恫喝の意味を込めてよく使いました。あんな言葉、普通の政治家は使いませんよ。そもそも政治家には自制心が大切です。ここまで言ったら言い過ぎになる。人に反対されたら、自分が間違っているのかなと反省する。それが政治家に必要な資質ですが、安倍さんは逆にムキになる。誰かに批判されたら、それを無理やり乗り越えていくのが勇気だと勘違いしている。
――メンタリティーは東条と似ているとして、しかし、戦前と今では政治システムが違う。国民の監視もある。だから、権力者の暴走を防げる。こんなふうに思っている国民も多いと思いますが?
 これが大きな誤解なんです。太平洋戦争が始まるとき、日本は軍事独裁だった。もっと厳密に言うと、これは「行政独裁」だったのです。軍事が行政を握り、立法と司法を自分の下に置いて支配した。そして戦争に突き進んだ。「今は戦前の軍事独裁とは違う」「そもそも軍部なんかいないじゃないか」と言う人がいますが、私は「何を言ってるんだ、戦前は軍事独裁じゃなく、行政独裁なんだよ」と説明しています。安倍政権は行政が立法と司法を押しつぶそうとしている。そこも東条と似ている点です。
非正規雇用の増大が世の中を右傾化させていく
――東条は行政独裁でどんな横暴ぶりを発揮したのですか。
 昭和18年元旦、東条は首相官邸で目を覚まし、反東条の言論人、中野正剛衆院議員)が朝日新聞に寄せた「戦時宰相論」を読んで激高する。戦時の首相は強くあらねばならないという主張でしたが、東条は自分への批判と読んで、司法大臣に「中野を逮捕せよ」と命ずるんですね。だけど代議士の中野を捕まえる容疑はない。そこで東条はどうしたか。今度は憲兵隊に調べさせて中野に脅しをかけたのです。中野は追い詰められて自殺してしまいましたが、恐ろしいのはその後、中野を釈放した判事たちが戦地に送られたことです。東条から「懲罰召集」を受けたのです。
――安倍政権も官邸が全省庁に睨みを利かして、司法も立法も押さえている。こうなると、秘密保護法もあるし、やりたい放題ができますね。
 安倍さんの本質は歴史修正主義的体質です。あの戦争は聖戦であり、侵略戦争ではないと固く信じている。今の日本は権力と歴史修正主義が一体化するという、いびつな形になっています。私は以前、米国の記者に「安倍さんは侵略に定義がないと言っているが、どう思うか?」と質問されたことがあります。私は安倍さんがニュルンベルク裁判とパリ不戦条約を踏まえて発言したのなら分かるが、そうでなければ思い込みと言われても仕方ないと答え、逆に「米国ではリベラル派が安倍さんのこの発言に怒ってるんでしょ?」と聞いてみた。するとその記者は「いや違う。共和党の保守派が怒っているんだ」と言いました。共和党の面々は「侵略に定義がないというのなら、じゃあ、真珠湾について説明してもらおうじゃないか」と憤ったそうです。歴史修正主義者とみられている安倍さんは、米国にも十分信用されていないように思います。
――しかし、日本では支持率が下がらない。
 戦前の日本人は天皇の臣民としての自由を与えられていました。天皇の赤子みたいなものです。戦争が終わって民主主義社会になり、国民はシビリアンになった。ということは、われわれは市民であらねばならないんですね。国家とフィフティーフィフティーの関係で、国家が間違っているときは「違うんじゃないか」と批判し、反対する。これがシビリアンです。ところが最近は、国民の方が自分たちを国家に隷属する国民だと思うようになってきているように思えてなりません。自分で考える権利を放棄し、政府に対して諦めているような、そんな感じがしますよ。国家に隷属する国民の行き着く先は国家のしもべです。そうなったらどうなるか。戦前の歴史を見れば一目瞭然です。
――国民はなぜ、隷属したがるのでしょう?
 経済や雇用が影響しているんでしょうね。金融資本主義が一世を風靡し、そうしたメカニズムの中で特権的な人が荒稼ぎし、物作りなどにこつこつ取り組んできた人は食えなくなっている。新自由主義で、食えない人には容赦しない。簡単に人を切り捨てる。これが当たり前の社会ですから、こうした風潮が人々を退嬰的な気分にさせているのだと思います。もうひとつは非正規層の拡大です。これによってアイデンティティーを持てなくなっている人が増えているのです。
――どこにも居場所がない?
 普通、われわれは地域社会や職場、家庭などに属しており、国家と向き合うときはそうした共同体を通して物事を考える。共同体の中でいろんな会話をし、多角的に物事を考え、検証する。ところが非正規の人の中には共同体に属していないことが多く、いきなり自分を国家と結びつけて考えがちです。中国に挑発されると「何で俺たちが中国にバカにされなきゃならないんだ」とムカッとくる。そこに「いや、こういう考え方もあるよ」という議論がない。
――そうした人々が「中韓はけしからん」と勇ましさだけの安倍を支持する? 世の中、ますます右傾化する?
 安倍さんは国民を右の方向に連れていく役割の立場だと思います。ただ、あくまでも橋渡し役。それほどの器じゃないですから。日本人が連れていかれる目的地には、もっとすごい国粋派の政権が待ち構えているような気がしてなりません。安倍さんは歴史的には、何者かに傀儡として使われているのではないか。そんなふうにも思えるんですね。
▽ほさか・まさやす 1939年北海道生まれ。同志社大卒。編集者を経て、「死なう団事件」でデビュー。「昭和天皇」など著書多数。2004年、一連の昭和史研究で菊池寛賞