ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

やりたくたって

 今の社会に暮らしていると最も金のかからない生活を送ろうとすると、それは殆ど日本の文化を捨てることになるんじゃないかという気になってきた。例えば地面に足の座った純粋の日本風一戸建てに暮らそうなんてことは首都圏なんかに暮らしていたらもうなかなかできるこっちゃない。集合住宅に住めばどうにか暮らせるくらいで、私なんかだと社会人になってからというもの、ず〜っと集合住宅に暮らしている。ましてや着物を着て暮らすなんてことはとても想像できない。いや、日頃洋服だけれども、なんかの時には頑張って着物を着るということもできない。洋服が夏物冬物があるように当然着物にも夏物、冬物がある。当然着るものだけでなくてその時に身につけるものだっていろいろありだ。そこにいくと洋服だったら数点の部品(表現は変だけれど)で事足りる。しかも私が日頃着るような洋服だったらイニシャル・コストが安いだけではなくて洗濯も簡単でその辺で汗をかいたらすぐにやっつければいい。しかし、着物だとなかなかそうも行かなかったりする。丸洗いだ、洗い張りだともの懸かりである。
 つまり日本の文化を志向するとそんなに安くはないのだ。気がついてみると今日もまた上から下までUNIQLO商品で一日を過ごしている。
 その上、もう既にあぐらをかくのもやっかいになってきたし、ましてや正座もなかなかだ。近頃はツアー・バスで温泉に行っても座敷で座布団の上に座っていることのできない人たちがとても増えているような気がする。昔の人たちは着物を着て膝を投げ出している人なんて記憶にない。かつて三味線のベテランさんがもう80歳だと仰っていたけれど、もちろん(当然に)きちんと正座の上弾いておられるのを見てさすがだと唸ったものだ。今や内海桂子師匠だって玉川スミ師匠だって椅子にお座りだ。
 伝統を守るのは生活に余裕のある方々に担当していただくしかなさそうだ。どうぞよろしく。