ナンセンス・トリオの前田隣が19日に他界していたのだそうだ。私が最後に彼を見たのは一昨年の12月のことで、浅草の東洋館(昔のフランス座)での立川談奈の独演会の時のことだった。楽屋に来ていたらしくて、最後に手を締めに舞台に上がってきた。
病気になって以降彼を初めて見たのはその一年前のことで、紀伊國屋ホールでの永六輔、矢崎泰久の年末恒例の会でのことだった。紹介がなかったらそれがナンセンス・トリオの前田だとは気がつかなかっただろう。首に大きなこぶができていたから余計わからなかった。「これが癌な訳じゃないですよ、もしこれが癌だったら生きているわけがない」といっては笑わしていた。
その間に一度浅草の伝法院通りを歩いていてすれ違ったことがある。思わず会釈をしてしまい、しまったと思ったけれど、彼はごく普通のように私に会釈を返してくれた。同じように会釈を返してくれたのは今は亡き内海好江さんだけだ。あの時は雷門だった。
ナンセンス・トリオがやっていたことは今から考えると「親亀の上に子亀をのせてぇ〜」の早口言葉ギャグ、「赤上げてぇ、白さげぇないで、赤下げない・・」なんかの紅白旗ギャグくらいだから推して知るべしだ。それ以外に全く想い出がない。しかし、これだけ高座の向こう側で話題になるんだからきっと若手の面倒見が良かったということなんだろうと想像する。
享年72歳。哀悼。