月に2回の新宿の日。ちょっとのんびりしていたらあっという間に朝の時間が経ってしまって、いつもの電車に乗り遅れてしまった。なにしろ急いで駅の階段をえっさえっさとあがったり下りたりしても、利用する二つの地下鉄が両方とも東京メトロのようにガンガン来る線ではないので、確実にその分、到着が遅くなる。つまり挽回ができない。そういう意味では都心にいるような気がしない路線である。
部屋に入るとお話は始まったばっかりのようで、一体どこに座ろうかと見渡すといつもの自分が座っているところがそのままあいている。やや、これは恐ろしい。なぜって、それは端だけれど、一番前なのだ。今期はとてもたくさんの人が参加していて空き椅子がなかなか見あたらないくらいなのだ。いつも前に座ってしまうので後ろの様子が良くわからない。今日は領土に関する歴史的な考え方についてであるけれど、こうしてみると南洋諸島における南洋興発の力は大きいものがあったようだ。北と南では当時の日本の対応策としては大きく異なる現地の実情があったであろうことが想像できる。
前回疑問に思ったことをお伺いするつもりだったのだけれど、どうやら先生は今日は急いでおられる様で、質問は次回ということで、終わった。(そう先生がいっておられるのにもかかわらず、なにか延々と話している人がいる。それでも先生はむげないことはしない。)
今日は池袋の西武百貨店の別館二階で「古本市」が開かれているというので、山手線で池袋に行く。どうせ池袋に行くんだから、今週初めに友人がfacebookでいっていた「春菊天ぷら」が載った立ち食いそばを喰おう、というので。一体どこにその蕎麦屋があるのかと思ったら、どうやら中央通路の東口側の丸ノ内線改札前くらいにある日本レストラン系の「お馴染み田舎そば」のことではないかと思う。自動券売機を見たら・・・あるある!春菊天うどん・そば、それぞれ360円也。切符を買ったところまでは良かったけれど、中で食べている人たちはみんなコートを着ているし、なかなか中に入れない。昔に較べたらこういう立ち食い蕎麦屋に女性の姿が圧倒的に増えている。ここでは圧倒的なのは中高年サラリーマンだけれど、二人組や三人組で結構なお歳を召したおばさんが混ざってくる。春菊は香りが立つからこんな時には美味しいものだ。それでもゆで太郎にはかなわない。
西武百貨店の古本市はなかなかいろいろあるのだけれど、本当に欲しいものにはぶつからない。それでも、4点。驚いたのは植草甚一の「Wonderland」の創刊号がえらい高値の値札がついていた。うちにも一冊あるんじゃなかったっけ?
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折角ここまで来たんだからと、そのままジュンク堂に入ったのでは面白くないので、そのまま明治通りを下って古書「往来座」までやってきた。雑誌「考える人」がないかと思ったけれど、生憎とこの時はなかった。店に入ると直ぐ目の前に市橋本と「KAGEROU」が置いてあったのにはびっくりした。もう出たのか。ではと「マイケルサンデル先生はまさかまだ出ませんか?」とお伺いするともうすでに2回出たそうだ。そろそろ手に入るチャンスが来るかも。(そんなに待つなら新品を買えば良いのにねぇ)。
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「神話とのつながり―175篇のメッセージ」鶴見俊輔・西成彦・神沢利子 熊本子どもの本の研究会 1997/10:なにしろ鶴見俊輔マニア(といっても本だけだけれど)の私としては彼の名前が表紙にあるものは取り敢えず確保してしまう。巻頭の鶴見俊輔の話はまたまた興味深いものだ。ところが「あとがき」を読んで驚いたのは、この表紙に使われている絵が、かつて私が赤字を出して追われた職場の当時の上司の手によるものだったというのは世の中の因縁を感じさせたのである。
さて、ここからまた池袋まで歩くのも面白くないばかりか、疲れて来ちゃっているものだから、取り敢えず往来座の前のバス停にある椅子に座ってみると渋谷行きの都バスがやってきた。これは明治通りをずっと渋谷まで降りていくのだ。これなら新宿あたりで降りちゃっても良いし、なんなら渋谷までいっても良いかもしれないなぁと乗る。一番後ろの真ん中に一つ空席があって、その2列前にも40歳くらいの男がひとりで座っている席がある。取り敢えず一番後ろに座ったのだけれど、そのひとりで座っている男が大きなはっきりした、良く通る声で何か喋っている。連れがいるのかと思ったらそうじゃなくて、彼は目に映るものを自分の感想を加えて独り言にしている。「あぁ、この辺はマンションばっかりだなぁ」だったり、「あ、二階が目隠しされてらぁ(ビルの二階に確かにグリーン目隠しがまわしてある)」だったりする。なにしろ良く声が通るので、前の方に座っているおばあさんも、首を伸ばすようにしてその男を見ている。彼のその寸評は実に確かで、15年振りくらいにこのバスに乗った私もその声にあわせて右を見たり、左を見たりして、その景色の変化に驚いていた。
ふとバスの前に表示されている次の停留所の名前を見ると、それが「東新宿駅前」だったので、そうだ、これなら大江戸線に乗れるに違いないと、ボタンを押して降りた。
降りたのはよいけれど、周りをいくら見渡しても地下鉄の入り口が見あたらない。のっぺりとビルが連なっているだけだ。ちょっと迷いながら新宿三丁目方面に歩いてしまった。日清食品のところまで来て思案投げ首なところに自転車に乗った若い巡査がいた。「大江戸線の駅がこの辺にありますよね?」と聞いた。最初から「東新宿駅」といえば良かったのだけれど、私は「東新宿」という駅名は大江戸線ではなくて、都営新宿線か、副都心線の駅だとばかり思い込んでいた。
ところが彼の方は頭っから大江戸線=新宿西口と思い込んでいるらしくて「こっちにまっすぐ行けば・・」と新宿の方を指さす。話が噛み合わない。私も妙にしゃかりきになる。「大江戸線ってのは新宿西口の一つこっちの駅は何?」と聞くが、彼はとにかく新宿へ行けという。思わず体勢を入れ替えて、反対を向いたら、なんとそこに道標が出ていて私が来た方向に矢印が出ていて「→東新宿駅(大江戸線)」と大書してある。なんだ、これを見れば良かったのだ。「あ、なぁんだ、あっちか!」というと彼は「でも新宿の方が近いと思いますよ」とまだいう。「いや、そんなことはない、こっちの方が近いよ、ありがとうね!」というなり、私は後ろも見ないで今来た道を戻っていった。
彼はきっとなんて頑固な親父だと思ったことだろう。私は私で「この辺のことが良くわからないんなら、良くわかりませんといえばいいのに、なんて頑固な警官だろう」と思った。そうだ、彼に不審尋問をすれば良かったな。「あのね、ちょっと警察手帳を見せて貰えますか?」「な、なんで?」「いや、本当の警官かどうか疑わしいから」って。
今日はバスに乗っていたからか、意外と歩いていなくて7,800歩だった。