ほぼ足りてまだ欲 その先

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ノーマン・ミネタ

 NHKBSプレミアム(この呼称、どうにかならないかなぁ。書いてて恥ずかしい)で「渡辺謙 アメリカを行く「“9.11テロ”に立ち向かった日系人」(前編)を見る。

 日系二世で、9.11テロの時に運輸長官だったノーマン・ミネタを訪ね、当時全米上げてアラブ系、イスラム系に対して「レイシズム当然」という風潮の中、ミネタが敢然と人種プロファイリングに対して反対を主張していたことについて聴く。それは彼自身が戦中ワイオミングのハートマウンテン日系人強制収容所で生活した経験を持っているからである。

 これはまさに同次元の話であって、あの時は日本人であろうと、日本人を祖先に持つ米国人だろうとなんの区別もなく一括して強制的に収容所に放り込んでしまうという非人間的な行為に及んだ。当時もこのルーズベルトの考えに、最後の最後まで異議を唱え続けた閣僚がいたのだそうだ。それは当時の司法長官だったFrancis Beverley Biddleだという。彼は自身の著書、「In Brief Authority」の中でも触れているのだそうだけれど、フランクリン・ルーズベルト大統領に反対を表明したメモを送っている。

 ノーマン・ミネタは9.11テロの時のブッシュ政権の中にありながら実はクリントン政権でも働いた民主党員である。彼はあの時の日系人の扱いが明らかに間違っていたことを引用して、当時のCBSの看板番組「60minutes」でのインタビューに答えて、飛行場でのセキュリティー・チェックに際してもアラブ系の若者と白人の女性とでも差をつけてはいけないのであって、やるのなら二人ともチェックするべきだし、やらないのであれば両方ともにするべきでないとはっきり主張した。
 あの時点でテレビのインタビューでフェアネスを語るのは相当にエネルギーがいるはずだ。しかし、彼は「This is the right thing!」と言い切る。特に米国人の感性の中には「right thing」という言葉は大きな意味を持つ。どうしてそんな確固たる価値観を持つことができるのかという渡辺の質問にノーマン・ミネタは「building a strong foundation」をこつこつと積み上げてくるのだと明解に答える。あれで今年80歳だというのだから、頭が下がる。

 それにしても渡辺謙が羨ましくてならない。彼がどこから在米日系人の歴史に関心を持ち始めたのか知らないけれど、彼が「Iojima」の渡辺謙であるからこそ、ここまで多くのインタビュイーに恵まれることができたのだから。

 この番組には勿論Los AngelesのThe Japanese American National Museumが一枚噛んでいて、最後のロールにはcoordinaterとして20年間館長を務めた前館長のアイリーン・ヒラノの名前がクレジットされていた。(ヒラノのあと、館長を務めていたアケミ・キクムラ・ ヤノが今月初めに退任を発表している。3年ちょっとでの退任はいかなる理由だろうか。ヒラノが長いこと館長を続けていたことから考えると短すぎたような気がしないではないけれど、彼女はおよそ20年ほどこの博物館に勤めていたことを考えると自然な気もする。)

 この後編は明日の午後7時からである。