私の年代の人たちはおわかりだろうけれど、NHKのラジオで「うたのおばさん」という番組があった。ただ大人の女性が話しながら童謡を唄うという番組だったかと記憶しているんだけれど、もう随分忘れた。毎日放送されていたような記憶だ。
前にもここに書いたけれど、私は小学校一年生の頃だったかにツベルクリンが陽転して、肋膜炎かなんかになっているのが判って、三ヶ月ほどひとりで寝ていなくちゃならなかった。この頃の私の慰めといったらラジオしかなくて、後の「男はつらいよ」のたこ社長、太宰久雄がやっていた「マイクの旅」が大好きだった。週に二回放送があるのだけれど、それは同じ番組の録音だったにもかかわらずそれもまた聞くというくらいだった。だから、毎朝の番組は好きだろうとそうでなかろうと聞いていた。
今朝の訃報にこの「うたのおばさん」に出ていた二人の女性のうち、松田トシが96歳で亡くなった、というものがあった。もうひとりの「うたのおばさん」は安西愛子といって後に自民党がタレントを次から次に国会議員にした中の一人として参議院議員を三期もつとめたおばんでこちらも94歳になるが、まだ健在のようだ。ラジオからの歌声が額に青筋を立てるように流れてくるくらいに唄ってきたおばさんは二人とも長生きだったんだ。
二人のおばさんの歌を較べると、安西愛子の方が愛嬌があったといっちゃなんだけれど、松田トシは歌も語りもなんだかちょっときつくて、なんだかとりつきたくなかった思い出だ。
