ほぼ足りてまだ欲 その先

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小学校4年の冬

 私が自転車に乗れるようになったのは、小学校4年生の冬、のこと。この歳の夏休みにわが家は横浜から静岡県の清水に引っ越しをした。親父の転勤だった。昔のことだから家族全員で引っ越すのが当たり前だった。それまで暮らしていた横浜の実家は坂道の途中にあって、自転車に乗るような環境ではなかった。自転車の人は坂道をうんうん言いながら押し上げていたから、なんだか自転車に乗るのは厄介なものをわざわざ押しつけられるようなものだった。
 しかし、平坦な街、清水に来てみると自転車がないとかなり不便だった。それもあったけれど、周りの小学生で自転車に乗れないのは殆どいなかった。子供用の自転車なんていうものは滅多になかったような時代だから、ようよう中古の自転車を親父がどこかから見つけてきた。
 近所にあったなんにも使われていない大きな空き地で毎日のように、すぐ上の姉と二人で支えあいながら練習をし、とうとう乗れるようになった時は本当に嬉しかった。なんだか次元の違う生活になったような気がした。
 それからというもの、小学校の友人たちと群れになって自転車であっちへいったりこっちへいったり、一気に行動半径が拡大した。たまには久能山にまで遠出をしたことを覚えている。