ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

寄席

 昨日、今日と二日連続で上野鈴本演芸場
 昨日は金原亭馬生一門会。毎年この時期にここで。噂の六番目の弟子ッてぇのを初めて見た。まだ前座にもなっちゃいない。前座の見習い。六番目だからというので、駒六。多分ずぶの素人じゃないだろう。「穴子のからぬけ」。本当の、というのはちょっと変だけれど、開口一番、前座は駒松。彼は四番弟子。五番弟子が、先代馬生の孫。どうも駒松は旗色が悪い。しかし、声だけは誰にも負けない。知らない人はわからないかもしれないけれど、彼のような不器用だけれど、精進する奴だったらある時突然化ける。仲入りで楽屋口でばったり会った駒松から聞いたのは、どうやら一朝の弟子に、うちの学校の女子が入ったらしい。あの一朝さんの所に女子とは。見てみたい。
 三木男が「だくだく」をかけた。彼は前座に成り立ての頃のあのぼぉーっとした様からは随分変わって、随分噺家口調になった。しかし、あの髪型はどうだい。その辺のヒップホップの兄ちゃんのようだ。
 うちの学校の同窓生ということでは、実はこの日、オオトリの馬生師の膝代わりに高座へ上がったのが、江戸家小猫。今の猫八(四代目)の息子。彼が上がってきて最初にいったのが「多分小猫と聞いて皆さんが頭に思い浮かべたのはうちの父親のことではないでしょうか」って事だった。あれからもう4-5年は経っているはずだけれど、われわれは襲名披露を目の当たりにしていたからよく知っているけれど、多分一般的には知られていないだろう。国立演芸場での襲名披露に私も行っていた。
 当時は随分気を揉んだのだけれど、今回彼の高座を見て、私は驚いちまった。素晴らしい。もちろん代々の芸である動物の物まねも面白いのだけれど、彼の喋りが凄い!ただ面白いだけじゃないんだ。蘊蓄が見事に絡まっている上に、語りの間がとっても面白い。一緒に行った某その筋では有名なイラストレーターですら(奴のオヤジギャグは半端じゃない)「あいつの間は凄いな!」と絶賛である。
 家に帰ってくると早速彼からFacebookで繋がってくださいの連絡があった。駒松が意を決して彼と喋ったらしい。そのFacebookがこれまた面白い。
 前にも書いたかもしれないけれど、馬生門下では一番弟子と二番弟子の馬治と馬吉が来年3月に真打ちに昇進することになったと披露された。全員で10名が真打ちになる。馬治はそのままの名前、馬吉は馬玉(ばぎょく)という名前になるという。以前はかなりばらついた感じだった馬治だけれど、この日の「紀州」を聴いていて、ふと、ひょっとしたら先代の馬生に最も近い雰囲気を作り出すことができるのは馬治かもしれないなぁと思った。いや、なにも馬生の弟子だから、先代だろうと、今の代だろうと馬生に似る必要なんてないんだけれど、ふと、彼の語り口に先代が降りたような気がしたのだ。
 今日は「鹿芝居」今日の切符は持っていなかったのだけれど、昨日の仲入りに駒松が前に立って「一枚明日の券が残っております!如何でしょう!」と怒鳴ったから手を上げて、これを買った。行ってみたら、ぬ列の11番で、なんとど真ん中だ。年忘れ吉例鈴本鹿芝居「人情噺文七元結」である。いつものメンバーで、金原亭世之介 / 古今亭菊春 / 林家彦丸 / 金原亭馬吉 / 金原亭馬治 / 林家正雀 / 金原亭馬生 / 蝶花楼馬楽で、このメンバーでのこの演目は以前にもやっていて、役割も以前のまんま。
 仲入り前は駒松から始まって、あっという間に終わるような噺。しかし、その中で正雀が「豊竹屋」をやった。さすがに今だったら正雀くらいしきゃやれないかもしれない。たっぷり聞いてみたい。
 世之介と菊春にはまた楽しませて貰った。世之介は大騒ぎになった耳が聞こえないのか、聞こえるのかよくわからない作曲家の扮装で現れた。菊春はなんと日本エレキテル連合の白塗りで、これがまた実に似合う。
 なぜか、二日連続で鈴本へ通ったら、うちに帰って頭痛がして、参った。