ほぼ足りてまだ欲 その先

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翻訳

 この歳になると、どんどん細かい字を丹念に読むのが辛くなるわけですが、これが英語の本を読むことが嫌になる要因でもございますな。本当に字が小さいからなのか、もはや英語を読んで咀嚼する能力が失われてしまったからなのか、判然としないところもありますが、自分では「字が小さいから」ということにして、自分の能力の欠落をごまかしてしまいたいところではあります。
 で、翻訳ですが、これはもう本当に発想力というか、翻訳する先の言語・習慣・歴史に関する知識が豊富でないと難しいわけですが、感覚に関する知識、というかその地域の肌感覚ってものがとても重要な気がしています。そう簡単に身につくわけじゃないわけで、優れた翻訳者というのはとっても偉大でございますよ。

 この映画の主役はパターソンという実在のNew Jerseyの街に暮らす、やっぱりPatersonという名前のバス運転手です。一週間が毎日朝起きるところから始まります。淡々とした生活。彼がまた淡々とノートに日記の様な詩を書くんです。そのノートを犬が食いちぎります。がっくりきた運転手が2011年11月7日に397番目のアメリカ国立公園ユニットとなったPaterson Great Falls National Historical Parkの景観を楽しめるベンチにやってくると、そこに日本人がやってきて、鞄の中からウィリアム・カーロス・ウィリアムズというやっぱりNew Jersey出身の詩人が出した「パターソン」という詩集を取り出すんです(この役者が永瀬正敏なんです)。
 で、こいつがへタックソな英語で「詩の翻訳ってのはレインコートを着てシャワーを浴びているようなもんだ」っていうんだなぁ。これには思わず笑っちまいましたねぇ。ずっとそんな気持ちを抱き続けてきたわけですが、それを現す術を知りませんでした。こりゃ旨い表現でございますなぁ。