ほぼ足りてまだ欲 その先

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牛肉

 米国のコンドリーザ・ライス国務長官が日本にやってくる。町村外務大臣小泉首相と会談をする予定である。米国の新聞は「ライスが牛肉の話」をしに日本にやってくると洒落ている。
 もちろんこれにあわせて次期中日米国大使となることが決定しているJohn Thomas Schiefferが牛肉輸入再開に口を出している。彼は2001年からこれまで在オーストラリア米国大使を務めていた。もちろんG.W.ブッシュにこれまでも充分に近い人物である。(http://www.namebase.org/というサイトが非常に興味深い)
 1947年10月4日フォート・ワース生まれの57歳。二男一女の次男。父親は建設業関連。兄はボブ・シーファーといって今度CBSアンカーマンとなるという。結構珍しいケースかも知れない。もちろん大学はテキサス大学の国際関係学だったかなんだったかで修士。25歳でテキサス州議会議員。大学在学中からテキサス選出の上院議員Don Kennard、そして州知事のJohn Connallyの事務所で働いていたようだ。それから法律の勉強をして1979年に弁護士。分野はもちろんオイルとガス産業。
 1989年にはG.W. ブッシュとE. W. ローズと一緒にテキサス・レンジャーズに投資。球団に本腰を入れる。1994年にブッシュが州知事となり、1998年にはこの球団を売り渡している。その後はこの球団を買い取ったヒックス氏と組んで雇われ社長をし、周辺不動産の開発等を担当。2000年の5月に自分の会社を興して社長となる。フォートワースのJ.P. Morgan Chase Bank等の顧問も務める。
 ご覧のように日本やアジアのことについてはほとんどこれまで縁もゆかりもないが、ブッシュにべったりの実績はとてもはっきりと分かる。
 テレビジョンのニュースでの彼のコメントのなかに、「normalなtradeに早く戻すべきである」という言葉がある。もちろん今回の米国牛の輸入禁止措置というのは米国内で狂牛病が発見されたことを受けての措置であった。米国の論調は“たった一頭の狂牛病の牛の出現で大騒ぎをする非科学的な日本の輸入規制”というものが主流である。何しろ年間10億ドルもの輸出商品を14ヶ月もの間棒に振ってきたのである。米国をいらつかせている理由は生後20ヶ月未満の牛ならば輸入するという条件を設定しながらなかなかこれを開始しない日本の姿勢にあるといわれている。  
 しかし、本当に狂牛病流入をこれで防げるのかどうか、という確信が国民に説明し切れているのだろうか。米国産の牛はデーターがないという。それは日本の食肉牛と比べたら比較にならないほどの規模で粗放的に飼育されている状況があるからではないか。つまり、簡単に言うとそんなことを気にしてなんていられないのではないのか。だとすると中身がどんなものであろうと自国の産業が疲弊するから相手国に認めろといっていることになる。こうした貿易の「ノーマルな姿」って一体何だろうか。
 Thomas Schiefferが大使を務めていたオーストラリアはかつて米国からのサーモン輸出について米国からその市場開放を詰め寄られていた。オーストラリアのサーモン業界は一気に天然サーモンを持ち込まれることで市場が崩壊することが目に見えていた。天然物をフリーに輸入することによって養殖物がその天然物がもともと持つ病気を避けられないという理由で反対していたが、米国はオーストラリアから入っている牛肉に対して報復するぞと脅しを掛けていた。最後はWTOに訴えるところまで行き、結果、とうとう市場は2000年に開放された様子であるが、タズマニアや西豪州(サーモン養殖産業の拠点)の業界では各国から持ち込まれる非加工サーモンに付着する微生物に神経をとがらしている。もともとは北大西洋から持ち込まれたアトランティック・サーモンとはいえ、乱暴な大国の論理によって地場産業が崩壊し、安心できる食材の提供が阻止されて良いものかどうかという問題は簡単な、誰にも分かる課題だ。オーストラリアはこれまでの米国主導の戦争にはすべてに出兵してきた米国の盟友中の盟友である。今度もオランダ軍が撤兵するあとにサモーアに出兵するのはオーストラリアである。その盟友国に対してもこうして自国産業を押しつけてきた。なんだか、オーガニックな食材を求めて一生懸命暮らしている人のところに来て、「そんなこと気にしていたら世の中暮らしてなんて行かれないんだよ!」と無理やり押しつけられているという構図が見えてしまう。
 改めて考えてしまう。「国益とは何か」