ほぼ足りてまだ欲 その先

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吸い殻とライター

 IHIの知多工場(今は愛知工場と呼んでいるのだろうか)での新造鉱石運搬船での爆発事故でひとり協力会社の塗装工が死んだ。どうも新聞記事で読む範囲では一体どこの区画に塗装していたのかが良く分からないのだけれども「船内の浮力調整スペース(時事通信 2007年08月08日11時57分)」を読むとどうやらバラストタンクのようである。私はよく知らないので、ハッキリしないのだけれど、新造船なのだからブロックの状態で塗装するのではないのか。建造ドックの中でブロックを組んだあとで溶接部分をタッチアップし、塗り直すために塗装していたのだろうか。今日の速報ではその外の区画に煙草の吸い殻やライターが発見されたという。その可能性は高いとはいえ、それが原因を特定できる証拠とは断定ができないが、日常的にボーシンによって持ち物検査が施されることもなかったというのだから、これが原因だった可能性はやはり疑うべきだろう。若しくはブロックをアッセンブリングしている時に、溶接していた作業者がそうしたものを捨てた可能性がないとはいえない。しかし、通常ブロック工場でそうしたことをするのは目立ちすぎる。
 塗装作業の多くは現場ではほとんど本工(造船会社の正式社員)が従事することはずっと昔からない。ずっと昔から全身を作業服でしっかり覆い、顔全面を覆うマスクをして、一体全体何色なのかわからないヘルメットを被ってエア・ホースを引っぱりながら塗料を噴霧しているのは必ず協力会社と呼ばれる下請けの作業者だった。彼らの就業条件は本来的には本工の管理下で実施されるべきものなんだと理解していたし、そうした現場の運営は当たり前のことだと思っていたが、考えてみたらそれは今でいう派遣作業になってしまう。しかし、いくつもの作業が現場で並行して進められる錯綜した現場であるはずの建築工事にとても似通った造船所では、組織としてのマネジメントの中で安全確保は重要なポイントである。
 にもかかわらず持ち物検査が日常的に行われていなかったのだとすると、伝統のある製造現場である造船所の安全管理としては致命的なことである。日本の製造現場がSONYのパソコン用のバッテリーのリコールに見るまでもなく衰退の一途を辿っていることが今回の事件で図らずも露呈したことになるだろう。新造船の現場でのこうした事故というのは結構あるもので、一番忘れられないのは三菱重工長崎での豪華客船の火災事故だろう。あの事故の原因が何なのかが特定できたのか、そのままになっているのかは知らないが、錯綜した現場を納期を急ぐあまりより錯綜した工程の中に放り出す状況にある場合、事故は起こりやすい。他にも納期を急ぐフェリーの建造中に上のデッキでガス切断をしていて、下のデッキにあった電線ケーブルが燃え上がった事故を知っている。今の造船所は各社線表が混んでいると聞いているからの工程を急ぐ状況にあったことは考えやすい。今回の場合、労働状況を点検する必要もあり、労働基準監督署の報告にもマスコミは神経を払う必要がある。
 ところで、マスコミが第一報で「造船工場」と伝えた時、とっても違和感を覚えた。昔はみんな「造船所」といったものだよな。