ほぼ足りてまだ欲 その先

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読売の社説

 例の「大連立」に関する話題の中で、読売新聞は既に今年の8月16日の社説で『民主党も「政権責任」を分担せよ』なる文を掲載している。読売新聞のウェブサイトではすでに掲載されておらず、個人向けには有料の「ヨミダス文書館」でないとこれを読むことができない。地元の図書館に行って縮刷版を閲覧してきた。下記にそれを掲載しておく。

2007年8月16日読売新聞 社説 大連立 民主党も「政権責任」を分担せよ
 お盆明けの政局が、内閣改造自民党役員人事へ向けて動き出している。安倍首相は、これによって党内の求心力回復を図りたいということだろう。
 だが、首相が求心力の回復に成功しても、参院与野党逆転状況に変わりはない。法案はすべて民主党の賛成を取り付けるか、参院での否決後、あるいは参院送付の60日後に、衆院で再可決するしかない。その再可決の手法も、そう簡単に使えるものではあるまい。
 予算案は衆院が優先するといっても、予算関連法案が成立しなくては、予算が執行できない。国民生活にも重大な影響が及ぶことになる。
 仮に、与党が次の解散・総選挙以降も衆院での多数を維持し続けられるとしても、3年後の参院選でも過半数を回復するのはきわめて難しい。6年後も難しいだろう。
 となれば、国政は長期にわたり混迷が続くことになりかねない。
 こうしたいわば国政の危機的状況を回避するには、参院の主導権を握る野党第1党の民主党にも「政権責任」を分担してもらうしかないのではないか。つまり「大連立」政権である。
 自民党は、党利を超えて、民主党に政権参加を呼びかけてみてはどうか。
 衆参ねじれ状況は、民主党にとっても、苦しい対応を迫ることになる。
 対決姿勢、政府・与党への揺さぶり戦術だけでは、政権担当能力を疑われることになる。国民生活や国益に配慮して、現実的な妥協をせざるをえない場合も少なくないだろう。でなければ、国政混乱の責任だけを負わされることにもなりかねない。
 しかも、いま直ちに解散というならともかく、いつまでも現在のような追い風が続くとは考えにくい。1年後、2年後の総選挙に勝てるという保証はない。
 民主党にとっても、施策理念を現実の施策として生かす上で、大連立は検討に値するのではないか。
 現在の日本は、緊急に取り組まなくてはならない重要な課題を、幾つも抱えている。
 例えば年金、医療、介護といった社会保障制度の立て直しだ。少子高齢化の加速に伴い、社会保障費の年々の自然増に対応するだけでも大きな財源が要る。
 他方で、財政再建も喫緊の課題だ。国・地方合わせた長期債務は770兆円にのぼり、今後も増え続ける見通しだ。歳出削減だけで解決できるような状況ではない。消費税率の引き上げが避けられないことは、自民、民主両党とも、実は、よく分かっているはずだ。
 外交・安全保障でも、北朝鮮の核の脅威にどう対応するかという国家的な難題に直面している。日米同盟の緊密化、中国との連帯強化が不可欠だ。
 これらの課題を巡る自民、民主両党の主張には、いろいろな差異がある。大連立に際しては、そうした差異を解消する方向性を示す大枠での政策協定を結べばいいのではないか。
 他の政党も、その政策協定に賛同できれば、政権に参加すればよい。
 当面するテロ特措法の期限延長問題も、国会駆け引きを超えた政権内部の協議となれば、互いの主張の調整・妥協もしやすくなるのではないか。
 ミサイル防衛(MD)や米軍再編に伴う諸問題も同様だろう。外交・安保については、自民党民主党の主流の基本的な考え方に、それほど大きな違いがあるようには見えない。
 年金をはじめとする社会保障政策についても、政権内部での率直な意見交換により、従来の意見を超えた新たな政策システムを構築できるかもしれない。
 自民党はこの秋から、税制の抜本改革論議を始めるという。その論議民主党も加わる形になれば、核心のテーマとなるはずの消費税率引き上げにしても、国民の理解を得やすくなるだろう。
 ドイツには、かつて、社会民主党SPD)が、長らく政権を担当してきたキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)との大連立を経て、社民政権を樹立したという歴史がある。
 大連立により第2党の存在感が薄れることになるか、政権担当能力への信頼感が厚くなるかは、その政党の努力次第だということである。
 05年11月に成立した現在のメルケル政権も、第1党CDU・CSUと、第2党SPDとの大連立政権だ。
 メルケル政権は、日本の消費税にあたる付加価値税の16%から19%への引き上げを実現し、増収分の3分の2を財政再建に、3分の1を雇用保険料の引き下げに充てた。また、所得税最高税率を42%から45%へと引き上げたが、これはSPDの主張を受け入れたものである。
 これにより、財政再建に一定のメドがつき、08年から法人税率の引き下げを実施することになっている。
 大連立内部では、時に両党間の議論が加熱することもあるが、全体としては、国政運営は効率的で安定している。
 秋の臨時国会が自民、民主両党の建前論がぶつかり合うだけの状況になる前に、両党は早急に大連立の可能性を探ってみてはどうか。

 非常に予断に立った論理が展開されているといわざるをえない。参議院は3年後の半数の選挙でも、6年後の選挙でも自民が過半数を回復するのは難しいとし、返す刀で民主党だって1年後、2年後の総選挙に勝てるという保証はないといっている。だからずっとこの不安定状態になっちゃうんだったらという前提をぽろりと転がしておいて、大枠での政策協定を結べばいい、だなんてそんなあほな、と呆れかえる提案をしていたんだなという確認のためにコピー代を遣ってきたことになる。
 こんな論理が成り立つのだとすると自民党中心の政権が交代するなんてことは起こらないということが重要だといっていることになる・・・あ、この新聞社はそういう立場に立っているんだったな、それを忘れていた。
 この社説をどんな人が書いたのか知らないが(もっぱらあのご隠居だといわれているけれど)ドイツのメルケル政権だって、肝心な部分の政策合意がCDUとSPDの間で今後はかられるかどうかはわからないだろうといわれているくらいだからこれを持ち出しても説得力はないだろうになぁ。
 問題はこんなところにあるのではなくて、至近の選挙で国民の支持を得ることのできなかった政府与党が引き続き政権を担当しているということにあるのだ。とにかく日本の選挙制度というものは自民党という永年自分の利益のためを考えることに熱中してきた体制が自らのために作り出した制度にあるのだから、そう簡単にはひっくり返らない。つまりそれでいながら選挙で負けちゃうというのは大方の意見が「一度はひっくり返せ」というところにあったということだ、ということを明確に受け止めることがまず必要なのだ。
 こんなご隠居の円台話での考えにやすやすと飛び乗ったお二人はなんとも情けないと、敢えてもう一度ここで申し上げるまでもないか。