ほぼ足りてまだ欲 その先

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温泉ーその2

 今日は帰りに日帰り温泉に寄って帰京だと聞いていたので、ま、ついでによるという程度の温泉なんだろうと、全く期待していなかった。温泉欠乏症状を呈してきていた頃だったので、数たくさん入れればそれで満足なりと思っていた。行った先は長野原から南の山の中に分け入ったところにある薬師温泉。温泉自体は古いものらしいが、埼玉を基点に東京都内にも骨董を集めた店舗を経営しているという「時代屋」系列の「かやぶきの郷 薬師温泉 旅籠」という温泉。これがまた最近の流行のコンセプトそのものといった“どこかで聞いたかもなぁ・・・”というタイプ。まぁいってみればうかい亭の温泉版とでもいうのだろうか。私はてっきり同系列かと思ったのだけれど。綺麗に葺き直した茅葺きの古民家が入口棟も入れると5軒ほどある。フロント、宿泊棟、お風呂は一番下にあって、フロントロビーには餅つきの臼を改造した椅子がいくつも置いてある。見た感じなかなかグッドなんだけれど、実は座り心地はなんともしっくり来ないというもの。それを承知でなんで置いてあるんだろうかと思うが、長居されても困るからこれでよいのだろう。しかし、移動するには相当に力がいりそうだ。
 ランチ時になると囲炉裏を囲んで座ると若い女性が炭火でチキンを中心に解説しながらその場で焼いてくれるというもので、この辺の雰囲気も「うかい鳥山」に似ている。
 それにしても本格的に凝った骨董、焼き物、民芸家具の収集は大したものである。そして移設してきた何棟もの茅葺き古民家はまごう事なき本物で、どうだ参ったか、というまでの自信を見せつける。お風呂は正確に云うと三つあるが、宿泊者以外には利用させない薬師の湯、貸切風呂があって、日帰り客は滝見乃湯と温泉ではないけれど薬湯の郷の湯が使えるのだそうだ。それほど大きくない風呂だけの利用に制限しているところを見るとそれほど湯量が多い訳でもなさそうで、その点では昨日の四万温泉とは比べようもない。どうしても「ここに後から無理矢理このコンセプトを持ち込みました」という雰囲気は否めない。
面白いのはここのウェブサイトで泊まるのにどれくらいのお金がいるんだろうかと「ご宿泊」のボタンを押すといきなり「個人情報保護方針」が出てきちゃってそれに同意しないと先に進めないと云うことになっておる。なんだかアクセスしただけで個人情報全部を持って行かれちゃうような錯覚に襲われる。これは何もここに関門としておかなくても良いんじゃないの、と思ってしまう。
 現地のフロントで若い従業員の方に「ここには宿泊の料金表というのはありますか?」とお伺いしたらその類のものはないけれど、二人利用一人あたりで18900円からだ」という。日本の宿泊施設は食事付きというのが原則なのでこういう条件付きの料金形態になるわけだが、これは外国人には分かりにくいことだろう。原則的にツインの部屋を一部屋いくらで泊まらせるかというシステムの方が万国共通だろうと思う。それにしても今時の格好良い施設では「宿泊料金表」なんてものは存在しないのか。
 この日はたまたま浦和レッズの関係者の結婚式が行われるということで現場はどうやらピリピリしており、マネジャーと覚しきおじさんはフロントカウンター近辺で若い従業員を怒鳴りとばしたりして、たまたま一緒になってしまった日帰り客としてははなはだ不快だった。出席者の中にかつての全日本監督を見かける。
 今度の温泉バスパックはたまたま出かけた群馬県の山の中が、まさに桜真っ盛りの時期で二日間とも梅、木蓮レンギョウ水仙、桜、ツツジと何もかもがいっぺんに花を咲かせている中を走るという実にラッキーな状況でこれまで経験したことのないくらいの素晴らしい景色だった。
 帰りのバスで通路を挟んで反対側に座っていたご夫婦はこれで帰ってから明日は朝7時代の新幹線に乗るパックで片山津温泉に行くのだそうだ。なんでもクラブ・ツーリズムの温泉クラブというのに入っていて年がら年中温泉探訪の旅を続けているんだというからその資産たるや並大抵のものではないのだろう。先日のあきる野のご姉弟ではないけれど世の中には思いもよらないほどの資産を持っている人というのはいるものなんだろうなぁと思わせる。