「社会保障国民会議における検討に資するために行う公的年金制度に関する定量的なシミュレーション」というものが発表されていて、「首相官邸のサイト」にアップされていてダウンロードできる。pdf化された資料は71頁。ちょろっと見てみようとしてダウンロードしたんだけれど、私の能力ではとても瞬時に理解できない・・。
各テレビ局のニュースで取り上げられていて、「社会保険方式」か、「全額税方式」かと議論されている。私は究極的には「税方式」にするべきだと思っている。しかし、ここで語られる税方式は消費税としたらその負担はどれほどになるのかという形で議論されてでもいる様な気がする。ここへの収入として考えなくてはならないのが何故消費税だけに限定して考えようとするのかが私には理解ができない。法人税率、所得税率を何故考えに入れなくて良いのか、そしてかつて消費税と取り替える形で廃止されてしまった飲食税の復活といった複合的な税収の道を何故考えに入れずにただ単に消費税を目的税課することで提示しようとするのかが分からない。その程度のことでネグリジブルな程度の税収増にしかならないというのか。あるいは消費税転換分として語る方がわかりやすいからなのか。
政府与党が考えるのは選挙に少しでも影響の少ない方法を答申させようとするのであろうことは予測がつくけれども、収入の少ない層も多い層もおしなべて同じ条件下に置いて語ろうとするのは発言力のないものを無視していこうとするやり方だといわれても仕方がない。
現在の基礎年金保険料の徴収率がこの程度のものであることの制度としての不完全さについて考えると、私は既にこのシステムは崩壊しているんだといってきたけれど、社会保障国民会議のシミュレーションを見ると徴収率が65%だろうと95%だろうと大した差はないんだといっている。これはとても驚く話だった。確かに年金の原資が政府負担分が1/2になるんだというわけだからなんだろうけれど、だったらこれまた社会保険の体をなさないのだ、といっても良い。すでにそこまで税方式になっているのだ。問題になるのは「これまで払ってきた人間」の感情的な問題か。
無年金者、あるいは年金の未払い者という人たちをそのまま放置してくるとそれは結果として生活保護という形になって現れてくるだろう。それがどれほどの負担になるかということも含めて考える必要がある。すると、法人税と個人所得税、飲食税、奢侈品税あるいは相続税といった税制を変更していくことで原資を確保して「税負担」年金制度に移行し、誰でも老後は確実に介護され、なんの不安もなく暮らすことができるとなれば、「老後の貯蓄」のために抱え込まなくても済むのではないだろうか。勿論「貯蓄大国」であったこの国の文化を変えるには時間はかかるだろうけれど、必ず老後は大丈夫となれば、個人消費が前倒しになるのではないだろうか。
社会保障国民会議全体会議のメンバーは下記。
- 阿藤誠:早稲田大特任教授(元国立社会保障・人口問題研究所所長)
- 大森彌:NPO法人地域ケア政策ネットワーク代表理事・東京大名誉教授(中大法卒 政治学 「高齢者介護・自立支援システム研究会」座長 内閣府・独立行政法人評価委 社会保障審議会 厚労省御用達学者)
- 奥田碩:トヨタ自動車株式会社取締役相談役
- 小田輿之彦:社団法人日本青年会議所会頭(株式会社加賀屋専務)
- 唐澤蘒人:社団法人日本医師会会長
- 神田敏子:全国消費者団体連絡会事務局長
- 権丈善一:慶應義塾大学商学部教授(経済学 慶大商卒)
- 塩川正十郎:東洋大学総長(“しおじい”こと自民党・元財務大臣)
- 清家篤:慶應義塾大学商学部教授(慶大経卒 自民党政府の諮問機関では常連)
- 高木剛:日本労働組合総連合会会長
- 竹中ナミ:社会福祉法人プロップ・ステーション理事長(霞ヶ関審議会委員を歴任する福祉系事業家)
- 中田清:社団法人全国老人福祉施設協議会副会長
- 樋口恵子:NPO法人高齢社会をよくする女性の会理事長
- 南砂(みなみ まさこ):読売新聞東京本社編集委員
- 山田啓二:京都府知事(与野党相乗り。東大法、自治省出身)
- 吉川洋:東京大学大学院経済学研究科教授 (マクロ経済 経済財政諮問会議)
「持続可能な社会の構築(少子化・仕事と生活の調和)分科会」は座長が阿藤誠で、後のメンバーは下記の通り。
- 阿部正浩:獨協大学経済学部教授(労働経済学 慶大商卒 電中研 - 一橋大 - 獨協大)
- 飯泉嘉門:徳島県知事(自公推薦 灘 - 東大法 自治省出身)
- 池上清子:国連人口基金東京事務所長(ICU MA UNHCR 国連本部 外務省ODA評価有識者会議委員、内閣官房長官諮問機関アフガニスタンの女性支援に関する懇談会)
- 岩渕勝好:東北福祉大学教授(早大政経卒 産経新聞 川崎医福大 少子化戦略会議 医道審議会 独立行政法人評価委 年金審査会参与)
- 荻野明彦:日本経済団体連合会少子化対策委員会企画部会部会長代理
- 奥山千鶴子:NPO法人びーのびーの理事長(乳幼児と親のための「おやこの広場」の運営 少子化社会対策大綱検討会委)
- 熊坂義裕:宮古市長(弘前大医 内科医 合併後初代市長)
- 木幡美子:(株)フジテレビジョン編成制作局アナウンス室主任(上智大英卒 公衆衛生審議会委 経済産業省産業構造審)
- 駒崎弘樹:NPO法人(保険的病児保育サポートシステム)フローレンス代表理事(慶大総合政策卒 在学中ITベンチャー共同経営を経て現職)
- 田中里沙:「宣伝会議」編集室長
- 樋口恵子:NPO法人高齢社会をよくする女性の会理事長
- 山口洋子:日本労働組合総連合会副事務局長
- 吉川洋:東京大学大学院経済学研究科教授
所得確保・保障(雇用・年金)分科会は清家篤・慶應義塾大学商学部教授が座長となってメンバーが
- 岩村正彦:東京大学大学院法学政治学研究科教授
- 岩本真実:株式会社K2インターナショナルジャパンY-MAC統括責任者 (若者自立支援事業者 このグループの前身といわれるインターナショナルコロンブスアカデミーとは・・・?2003年のオークランドの事件との関係はないのだろうか。→ 関連エントリー))
- 岡本康男:日本経済団体連合会社会保障委員会年金改革部会長
- 小田與之彦:社団法人日本青年会議所会頭
- 権丈善一:慶應義塾大学商学部教授
- 古賀伸明:日本労働組合総連合会事務局長
- 小杉礼子:独立行政法人労働政策研究・研修機構統括研究員
- 塩川正十郎:東洋大学総長
- 中村時広:松山市長(慶大法卒 三菱商事 愛媛県議 衆議(新進党) 二代目市長)
- 原令子:株式会社JEサポート代表取締役、社会保険労務士原令子事務所所長
- 細野真宏:受験予備校Hosono’s Super School主宰(大学在学中から予備校講師 「よく分かる」シリーズ著書多数)
- 水町勇一郎:東京大学社会科学研究所准教授(東大法卒 労働法)
- 宮島香澄:日本テレビ報道局記者(厚生省担当経験あり 2児の母 道州制ビジョン懇委)
- 宮武剛:目白大学教授(早大政経卒 毎日新聞 埼玉県立大 厚生省女性と年金検討会、国保中央会医療保健制度改革検討委、厚労省医療分野における規制改革に関する検討会)
- 山田啓二:京都府知事
しかしながらこの「所得確保・保障(雇用・年金)分科会」の議事録が第一回(3月4日)のもの以降が全く公開されていないのには何か意味があるのだろうか。
サービス保障(医療・介護・福祉)分科会は大森 彌 NPO法人地域ケア政策ネットワーク代表理事、東京大学名誉教授を座長としてメンバーは
- 今田高俊:東京工業大学大学院社会理工学研究科教授(東大社研卒 東工大 社会学 日本学術会議会員 紫綬褒章)
- 逢見直人:日本労働組合総連合会副事務局長
- 加戸守行:愛媛県知事(東大法 文部省 大臣官房長 リクルート事件辞任 日本芸術文化振興会理事長、日本音楽著作権協会(JASRAC)理事長 1999県知事当選 「扶桑社版がベスト」)
- 唐澤蘒人:社団法人日本医師会会長
- 神野正博:特別医療法人董仙会恵寿総合病院理事長
- 清原慶子:三鷹市長(慶大社研後期課程修了 ルーテル大 東京工科大)
- 齊藤正憲:日本経済団体連合会社会保障委員会医療改革部会長
- 澤芳樹:大阪大学大学院医学系研究科外科学講座心臓血管外科学主任教授
- 竹中ナミ:社会福祉法人プロップ・ステーション理事長
- 辻本好子:NPO法人ささえあい医療人権センターCOML理事長
- 中田清:社団法人全国老人福祉施設協議会副会長
- 西村周三:京都大学大学院経済学研究科教授(京大経済卒 医療経済学)
- 野中博:野中医院院長
- 堀田聰子:東京大学社会科学研究所特任准教授(人的資源管理 東大社研)
- 南 砂:読売新聞東京本社編集委員
- 矢崎義雄:独立行政法人国立病院機構理事長
こうして見渡してみると世代的に広い範囲から選出されていると見えるが偏りを感じないでもない。研究者の場合はこれまで政府系の審議会等の常連が目立つが、これはこの会議に限ったことではない。新聞社を経た大学教員が目立つ。若手がどれほどこの会議で発言しているのか興味深い。その意味ではさっさと議事録を公開するべきだ。
株式会社K2インターナショナルについては軽々にものを語るべきではないと思うけれど、あのオークランドの事件との関係がとても気になる。あの事件が日本ではほとんど報じられずうやむやのうちになんだか分からなくなっていることも気になっている。