先日見物にいってその案内者の態度に大変驚いたことを、こんな国を挙げて大変な状況になっている中でノー天気にもここに書いた。で、ぐちゃぐちゃになった本棚の整理の合間に、何百枚も撮った写真を少しずつ整理をはじめていた。
桂離宮にいったときの写真の中に、待合室に一部200円の簡単なパンフレットが置いてあって、そこの箱にお金を入れるようになっている。なんでそんな写真を撮ったのかというと、単なる箱なのに「釣り銭は出ません」なんて書いてあって笑えたからなんだけれど、そこに「財団法人菊葉文化協会京都支部」と書いてある。こりゃなんだろうか。菊の花なら、御紋章かと思うけれど、菊の葉っぱだ。
「宮内庁が継承し,管理しているこれらの伝承文化や文化財について,調査研究,国民への紹介等を行うとともに,皇居,京都御所,正倉院等の歴史的・文化的に貴重な施設等について,環境の保全,参観上の利便の向上等を図り,もって地域文化・国民文化の向上及び住民福祉・国民福祉の増進に寄与することを目的として設立されました」と書かれた立派なウェブ・サイト(こちら)がある。こちらのサイトで公開されている財団法人として公開した情報の中に、平成21年度の事業報告があり、「(4) 国の事業への協力事業」として国から請け負った業務のひとつが「御所・離宮参観案内業務 延 301人 2,291千円」というものである。これが果たしてわれわれのような「下々」の見物に対応するのかどうかわからないけれど、年間に延べ301人が案内をして、全部で国からはこれについて229万円が払われたということか。
とすると、今回私を案内してくれた2人の方のガイド料金はこの財団法人に対して国から料金が払われたということになる。つまり、あの人達は国が雇っているわけではなくて、この菊葉文化協会が雇っているということになるのだろうか。
もし、あのガイドがボランティアだとしたら、よもやあんな態度を取ることはあり得ないだろう。
しかし、同じように公開されている平成22年度の予算を見ると、そこにこれと同じ項目はなくて、「各地の土曜日の案内業務」となっている。これが何を意味するのかわからない。私が見物を申し込んだのは確かに宮内庁の京都事務所参観係である。
で、この財団法人なんだけれど、実に分かり易い人事構成になっている。資料が見つかったり見つからなかったりするので、情報のレベルがまちまちだ。
- 財団法人菊葉文化協会役員名簿 平成22年6月22日現在(同協会ウェブサイトより)
- 非常勤理事 藤森昭一:日本赤十字社名誉社長 1926年生 旧制松本中学(現松本深志高)−東大法政卒。厚生省-環境事務次官-内閣官房副長官−宮内庁長官−日本赤十字社社長などを歴任。勲一等旭日大綬章。
- 常勤理事 角田素文:H18.12.6就任(当時64歳)元皇室典範改正準備室副室長、元内閣官房内閣審議官
- 非常勤理事 小林実:(財)地域活性化センター顧問(財)日本音楽財団会長、元(財)地方自治情報センター理事長、元自治事務次官(1991年10月15日 - 1993年1月8日):現在の(財)地域活性化センターは常勤理事長が石田直裕(元総務省行政管理局長)、常務理事に丸山浩司(元内閣府大臣官房審議官)がいて、会長以下副会長が3名、理事が17名、監事には鈴木郁也住友信託銀行株式会社常務執行役員、常勤監事に坂巻三郎(元内閣府北方対策本部審議官)がいて、最高顧問が日本商工会議所会頭の岡村正、そして顧問というのは小林実ひとりではなく、他に関西電力株式会社顧問の小林庄一郎がいる。その上参与の3名がいて、これは都道府県議会議長会会長、市議会議長会会長、町村議会議長会会長が就任するようだ。それにしても随分と頭でっかちな財団だ。では小林実が就任している日本音楽財団とはなにかというと、《主な事業は、所有する楽器を演奏家に貸与する「楽器貸与事業」》で、文化庁芸術文化課所管。財団法人日本船舶振興会(日本財団)による全面的支援を受けていると自らサイトに記載。小林実は2003年6月に会長就任。1992年から会長に就任していた前任の首藤堯は福岡県副知事−自治事務次官−地方財務協会会長を歴任。大正12年2月生まれ、昭和21年9月九州大学法学部卒業、昭和22年5月内務省採用、昭和41年8月自治省財政課長、昭和46年8月福岡県副知事、昭和48年11月自治省税務局長、昭和51年1月自治省財政局長、昭和52年7月自治事務次官、昭和53年9月退官、 (財)地方財務協会特別顧問。つまりこのポストも自治事務次官の持ち回りポスト。小林実が以前に就任していたのが(財)地方自治情報センターで地方公共団体(都道府県や市町村等)の情報化推進支援業務と記されている。現在のこの(財)地方自治情報センターの理事長は小室裕一となっているが、財団のウェブ上ではその経歴についてはなんにも記載していない。ある種の意図を感じるといっても良いだろう。現在のその理事長の経歴は下記の如くである。小室裕一:1950年生まれ。1974年東京大学法学部卒業。自治省入省。1979年群馬県行政管理課長。1984年臨時行政改革推進審議会参事官補佐。1987年自治省財務局交付税課理事官。1989年大阪市経済局参事(デュッセルドルフ駐在) 1992年青森県総務部長。1994年自治省広報室長兼行政相談官。1995年自治省公務員部福利課長兼内閣審議官(年金担当)1996年自治省行政局振興課長。1999年自治省税務局企画課長。税制調査会、法定外税等を担当。2001年総務大臣官房審議官(税務担当) 2005年自治大学校長、EROPA(行政に関するアジア 太平洋地域機関)地方行政センター所長ちなみにこの財団の理事のひとりである須貝俊司の経歴はこうだ。1976年東京大学法学部卒業。自治省大臣官房情報管理室長−消防庁予防課長−警察庁長官官房付−大分県警察本部長−総務省大臣官房付−自治医科大学事務局長−地方公務員災害補償基金事務局長−総務省北海道管区行政評価局長。2006年8月、財団法人地方自治情報センター理事に就任。さて話を元に戻して菊葉文化協会の非常勤理事である。
- 大久保利泰であるけれど、彼は霞会館常務理事となっている。名前から想像がつくように大久保利通の曾孫、昭和9年生まれ、慶應義塾大卒−横浜ゴム勤務−霞会館常務理事。霞会館は戦前の華族会館で未だに総務省所管の特例民法法人という不思議な存在。「現在では、会の趣旨に賛同し会員2名の推薦があれば、旧華族でなくとも総会の承認を受けて会員になることが出来る」という気取りようで、なんとも時代錯誤な集まり。
- 勝山亮は元宮内庁管理部長、元宮内庁長官官房審議官
- 同じく非常勤理事の齋藤正治は東京急行電鉄の顧問ではあるけれど、元警視庁元副総監で、これまたもちろん自治省系統の官僚ということになる。
- 非常勤理事・小濱本一(おばまもといち)は全国モーターボート施行者協議会専務理事。国土庁地方振興局総務課過疎対策室長。消防庁救急救助課長。消防大学校長。自治体国際化協会北京事務所長。全国市長会経済部次長。全国市長会事務局次長。市町村アカデミー副学長。
- 非常勤理事・沼銑十郎は元皇宮警察本部護衛部長。元皇宮警視長
- あとは京都府、京都市、奈良県の東京事務所長を務めたいわゆる地方官僚である。
大久保以外はものの見事に自治省官僚が関連地方公務員の天下り組とともに居心地のよい場所をひっそりと占めているという印象が強い。こんな風にあっちでもこっちでもいくつもデレデレと国税を喰いたいだけ食い散らかしているに相違ない。
早く辿り着いてしまった人たちのために入り口の外にベンチでも置くとか、どうせ待合室があるんだから、そこまでは何時でも良いから入れてくれるとかの便宜を図ることでも創造的に考えられないものだろうか。いつまで経っても「下々」意識でいるのは大間違い。しかし、そうしてお上の意向に平伏することが堪らないという輩がいるのも事実で、そうしたフェティシズムについての考察というのも面白い研究課題にならないとも限らない。
あの案内業務に就いている諸兄もひょっとするとそうした自治省がらみ、あるいは地元の役人あがり、あるいは教員あがり、ということがないともいえないだろう。こうして考えると、あの程度であることが納得できそうだ。