ほぼ足りてまだ欲 その先

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歌舞伎

 ずっと先(せん)のことだけれど、あるところで若い衆が集まって呑んでいたら、そこにやってきた若者のひとりが「私は歌舞伎役者やってんですよ」と云った。私の周りにそんな奴はひとりとしていないから、面白いことを云う奴だと思ったら、国立劇場の研修を経て、大看板の弟子として修行をしているんだと知れた。思わず「なんでまたそんなことを・・?」と不思議な顔をしていたんだろう、そう聞いたら、やつは「皆さんそう仰います」といったものだ。今時珍しい若者がいるんだねぇとそりゃそう思いますよ。なんたって、梨園の生まれじゃなきゃそうそう大看板なんかにゃなれやしない。それは分かり切っている。それなのにそんな世界に入ろうとするってんだから、そりゃ考えちゃう。
 そこへ行くと噺家はどこの生まれだろうと、頑張って堪え続ければ、どうにかこうにか(金持ちには間違ってもならないだろうけれど)やっていける。そりゃ誰かの血統を抱えてその世界に入ればその方が恵まれているのは、三平の家、志ん生の家、小さんの家なんてぇのを見ていればわかる。地下室にご祝儀を隠しておける家なんてものに暮らしているのはその世界に噺家はごちゃまんといたってあいつんとこくらいのものだもの。
 しかし、不思議なことに若い噺家は必ずといっていいくらい自分のブログやらHPを持っている。マメですよ、じつに。
 人気商売だから、お客さんあっての物種だから、自分をたくさん露出しなくちゃならない。そういう点ではとても面白い社会になっているんだなぁと思う。歌舞伎の若手はそこへ行くとどうしているんだろうか。