ほぼ足りてまだ欲 その先

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福島 花見 二日目

 前日は小糠雨が降り続き、行く先々の桜は残念ながら盛りを過ぎていた。例年に比べて驚くほどの早さのようだ。岳温泉で初めて染井吉野の盛りに追いついたのはラッキーだったかも知れない。寂れた温泉街の角を曲がったそこに立派な満開の桜を見つけると、本当に生きていて良かったなぁと思ってしまうくらいだ。
 今朝は朝一番には雪を頂いた安達太良山が姿を見せていたのだけれど、天気予報の通りに霧が出てきたらしく、すぐに姿を消してしまった。それでもバスが二本松の街へ降り、福島に向かうに従って空は晴れ、温度は上がり、何もいうことのないお花見日和となる。
 今朝の最初の目的地は「花見山公園」という様々な花を見せてくれるところのようだけれど、他の花見名所に比べて枝垂れ桜がすごいとか、何がすごいというところではなさそうだったけれど、いってみてわかった。この山は花卉農家の持ち物だということなのだ。個人の持ち物を無料で公開してるのだそうだ。
 それにしてもとんでもない数の見物客がぞろぞろと細い道をあたかも蟻の列のようにうめている。これじゃぁ、沿線の家庭にとってはとんでもないことになって居るんじゃないだろうかと人ごとながら気を遣う。気がつくと車が殆ど通らない。どうなっているのかと思ったら、乗用車は駐車場が「あぶくま親水公園」に仮設されていてそこからはシャトル・バスがここまで通っているのだそうだ。途中途中のお宅では庭先や門口にお豆やら野菜、山菜の類を並べて売っておられる。それぞれにメリットがあるということだろうか。これはこの日まわった他の桜名所でも似ている。連れ合いはタラの芽、ふきのとうを入手。日曜日の夕飯のおかずが予想できる。
 山全体が霞が掛かったようになっていて、近づいてみると見たことのない桜やら見たことのない様々な花が咲いていて、前日の雨で多少ぬかるむ下を見ている余裕がないくらいだ。皆さん一番上まであがられるので、私たちは途中から下に降りていく。楓の類で春から赤くなる葉のものがあるのは私は知らなかった。
 バス駐車場のすぐ傍には売店村ができていてなんでも売っている。この地域に来ると何時も眼にするのは郡山の柏屋薄皮饅頭で、今回も漉し餡を戴いた。今回初めて口にしたのは福島のニュー木村屋(和菓子屋の名前じゃないなぁ、これは)の「栗本陣(栗本さんの陣なのかと思ったら栗の本陣ってわけで、中に栗がまるまる一個入っている)」で、これは美味しいなぁと思った。で、これを買おうとしている横に見慣れない茶色の饅頭があって、これは何?とお伺いすると、なんと「カリント饅頭」だというのである。黒糖で作って、多分揚げてあって外がカリカリしたまるでかりんとうなんだけれど、中は漉し餡。こりゃ旨い。2日間の賞味期間といわれたので、持って帰るのをちょっとためらい、2回試食。他でも作っているらしいけれどね。
 次には阿武隈川沿いを北上して桑折(「こおり」と読むんだけれど、知らなきゃ読めないなぁ)地区の桃畑を見に行く。ところが川沿いの道がやたらと渋滞である。なんだろうと思ったらその仮設駐車場に入ろうとする乗用車の列だった。それでもこの地区の運営はとても巧くいっているといって良いだろう。
 川のこっちから向こうにとっても大きな構築物がそそり立っているのが見える。どうみても府中の競馬場の観覧席に負けず劣らずの観覧席に見える。考えてみたらこれが福島競馬場である。びっくりするほどの立派な建物だ。さすが国直轄の特定公益法人は儲かって居るんだなぁ。まさかこの公益法人はどこかに金を流していたりしないんだろうなぁ。まさか他の公益法人漢検のようなことを大なり小なりやっていたりしないんだろうなぁ。役人がリタイアしてから儲かるようなことをしていたりしないんだろうなぁ、とそんなことを考えてしまう*1
 桃の里・伊達桑折にやってくると本当に辺り一面桃の花で桃色(うまいこと表現したものなんだなぁ)に埋め尽くされている。私たちがバスを駐めて降りると、そこにたくさんの人たちがぞろぞろと歩いてこられる。花見山公園からぞろぞろ歩く人の列に慣らされてしまっている私は別にこれといった違和感を覚えなかったのだけれど、辺り一面の桃畑になんでこんなにたくさんの人が来るのか不思議だった。良く見たら農協主催の歩く会のご一行様、約200人が丁度通りかかったところだったのだ。それにしてものんびりした春の日だ。
 ここの桃は皇室献上品だという説明がされるけれど、献上って、誰でもできるんじゃないのか?差し上げるけれど、それがその後どのような経路を辿るのだろうか?どなたかの口に入るのだろうか。入らないのだろうか。ま、それくらい丹誠を込めて作っていますよ、というキャッチフレーズになるということだろうか。
 適当な昼飯をとってからいよいよ三春の滝桜である。東北縦貫道を南下して郡山のジャンクションで磐越自動車道を東に取る。144号線を南下して人工湖斜張橋をに入った途端からバスはのろのろになる。もうここから駐車場へ入るための渋滞になっているのである。導入路はぐるっと回るようにできていて、その距離は4kmほどで、それが全線渋滞していることになる。添乗員さんの判断で私たちは駐車場の2km程前からバスを降りて、車が全く来ないショート・カット・ルートを歩くことにした。ところがこれが大正解で、この沿線にも桜の並木ができていて、これが満開だ。乗用車で来ている人たちは多くの場合、ここを通ることがないわけで、これはバスで来た人間の特権だといっても良いくらいで、堪能。
 駐車場に着いてみると、これはもうびっくりの大混雑である。何年も前からこの桜を見に来る人たちでごった返していたのか、駐車場から歩行者は道路をくぐるようにできたトンネルを通って村の中に入っていく。なんだか米国のナショナル・パークの駐車場からの導入路のようだ。
 村は花見公園のように各家がお店を出していて地産のものが売られている。豆、野菜、味噌、苗木等々。また何かを買っている。ひとつが3-400円くらいからなので、高いものを買っているような気がしないのが不思議だ。
 さて、その滝桜である。樹齢千年といわれているというのだけれど、崖の中腹にあたかも羽衣を拡げたようにふわぁ〜っと広がるこの桜は実になんとも本当に見事だ。毎日、毎日こちらのサイトで現状をチェックしていたのだけれど、良くここまで持ってくれたと感動。しかし、例年から比べると今年はとてつもなく早くて、危ないところだったといって良いだろう。この桜は周囲をぐるっと回って上からも横からも見ることができる。それがいろいろな光線を愉しむことができる。それにしてもものすごい人出だ。駐車場で乗用車のナンバーを見ると様々だ。あれだけテレビで放映されればその気になるのもむべなるかなである。
 私たちはそこから小野町の夏井川沿線に2.5kmにわたって続く桜を見に行く。例年だとまだまだ早い時期なのだそうで、三春の滝桜とこちらの桜を同時期に愉しむことは難しいのだそうだけれど、今年はこっちも満開だ。こちらのウェブカメラで確認することが可能。こちらはそれ程の人出ではないから皆さんゆっくりと河原で花見を愉しんでおられる。2.5kmという長さは並大抵の距離ではない。これはすごい。磐越自動車道からも見ることができる。
 常磐自動車道を南下して東京に戻る。二日間に愉しんだ桜の数はもう一体どれほどの数に上るのだろうか。なんだか一生分の桜を見たような気がする。
 観光バスの中のマナーを守る人たちばかりだったらもっと愉しめたろうにと思うとちょっと残念な気持ちがしないでもない。これからまたちょっとざわざわした日々を送ることになるのだろうから、その前にちょっとした大休憩だった。

*1:私のイメージはこうした博打産業はある種の「貧困ビジネス」なんだよなぁ。それを国が営業しているわけだ。良くこうした産業を批判すると、それじゃ、これがなくなったときにこれを唯一の楽しみにしている人たちは楽しみがなくなっちゃうじゃないか、というのがあるけれど、そりゃ、中毒の人が困っちゃうからアヘンを禁止しないという論理と大差ない。そりゃずるいよ