ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

予見できない?

 昨日のNNNドキュメントは「自殺多発…自衛隊の闇 沈黙を破った遺族の闘い」自衛隊の自殺者は05年101人、09年86人と番組が伝えている。実は一般国家公務員の自殺者数に対し、自衛官の自殺は格段に多い。これは何を意味するのか。
 2007年11月22日付けで鈴木宗男衆議院議員(当時)の質問に対して福田康夫内閣が送付した回答書によると「平成16年度(2004年度)94人、平成17年度(2005年度)93人、平成18年度(2006年度)93人であり、平成18年度(2006年度)の自衛官の自殺による死亡率は10万人当たり38.6人となっている。
 そしてこの回答書の中ではその原因として「病苦」「借財」「家庭問題」「職務」「その他・不明」を挙げている。そしてその対応としてメンタル・ヘルス対応を考えていくと回答している。
 何か重要なことに対する認識が欠けている。

母親控訴へ 「国と個人に責任」は評価
 「肩すかしをくらったような判決」――。海上自衛隊横須賀基地護衛艦「たちかぜ」でのいじめをめぐり、自殺した1等海士(当時21歳)の遺族が、国と先輩の元2等海曹(40)に約1億3200万円の支払いを求めた損害賠償請求訴訟。横浜地裁は26日の判決で、原告の主張をほぼ認めたが、被告が自殺を予見することはできなかったと認定した。遺族や支援者は一様に複雑な表情を浮かべた。
 判決の言い渡しが始まった直後の午後1時33分、法廷を飛び出した弁護士が地裁前で「不当判決」と書かれた紙を広げると、支援者の間にどよめきが起きた。
 判決後の報告会には、支援者ら約70人が出席。岡田尚弁護団長は「裁判の中で、自殺の予見可能性についての議論は一度もなかった。その点では、不意をつかれたような判決。人の自殺を予測できるなら、自殺は起こり得ない」と厳しい表情で語った。一方で、「国と個人(先輩隊員)がともに責任を負うとされた判決はほとんどなく、結論をぬきにすれば画期的だ」と評価した。
 1等海士の遺影を持って報告会に出席した母親(56)は「息子が生きた証しを残そうと、自衛隊が改善される判決を望んでいたが、残念。息子の無念を晴らすためにこれからも闘っていく」と話し、控訴する意向を明らかにした。
【息子の無念は晴れない】
 息子が自殺現場に持って行ったリュックから見つかった遺書には、「必ず呪い殺してヤル」と、先輩隊員への激しい憎しみが記されていた。息子の強い意思を感じた両親は2006年4月、訴訟に踏み切った。
 英語が得意だった1等海士は高校卒業後、カナダに留学。帰国後に、父親の勧めで海自に入隊した。
 自殺した日、息子から父親に電話があった。泣いたまま黙り込む息子に、父親は「つらかったら自衛隊をやめてもいいんだよ」と声をかけた。息子は「今、友達と一緒なんだ。時間だから行くね」と告げて電話を切ったという。その数時間後、息子は電車に飛び込んだ。「自衛隊を勧めなければ……」と繰り返し話していた父親は2009年、病死した。
 判決後、母親は「夫は、自衛隊が生まれ変わり、国民から信頼される組織になってほしいと望んでいた。今回の判決では息子の無念は晴れない」と話した。栃木県内の自宅に帰ったら、「最後まで闘うからもう少し見守っていてほしい」と仏前で報告するつもりだ。
【目立つ自衛官の自殺 訴訟相次ぐ】
 自衛隊内のいじめをめぐる訴訟で、国の責任が認められたのは、2008年の福岡高裁判決に続いて、今回が2例目。静岡地裁浜松支部でも、航空自衛隊員の自殺をめぐる訴訟が続いており、3月に結審する予定だ。
 防衛省によると、2009年度の自衛官の自殺者は80人。2004年度の94人をピークにやや減っているが、一般国家公務員の自殺者数が10万人あたり21.7人(2008年度)なのに対し、自衛官は34.2人(2009年度)。防衛省は自殺事故防止対策本部を作り、相談窓口の設置や啓発活動に取り組んでいる。
 今回の判決は、国が隊員の自殺を予見できなかったと判断したが、福岡高裁の訴訟で原告側代理人を務めた弁護士は、「防衛省は対策本部まで作っており、予見すべき義務がある。原因をしっかり調べれば、自殺は回避できるはずだ」と述べた。(2011年1月27日 読売新聞)

 2008年2月7日号週刊文春自衛隊員100人の自殺 横須賀海士長が遺した『内部告発』」に多くの事例が書かれているそうだ。その中に上記事件についてこのように説明されている。

  • 2004年10月、海上自衛隊横須賀基地護衛艦「たちかぜ」の電測員が鉄道自殺した。03年に入隊したこの隊員は先輩の隊員から、ガス銃で狙われたり、パンチパーマにすることを強要され従わないと「BB弾」の的にされたり、アダルトのCDを合計50万円で買わされるなど、執拗ないじめ、暴行・恐喝を受けていた。自殺の直後、警務隊は遺族に「原因は借金」だと説明したが、警察が現場で発見したリュックから手帳や遺書が発見され、いじめの事実が明らかになった

 今では「いじめ」という言葉があるけれど、かつての旧日本軍にはこんな言葉は存在しなかった。「制裁」という言葉だった。堂々と鉄拳制裁が行われていた。海軍には海軍バットなんてものが存在した。なんだかとても有意義な行為であったかの如く語られる。その悪習はそのまま自衛隊に受け継がれていると思って多分に間違いはないだろう。北海道での女性隊員に対するセクハラや、転属することになった隊員に対して何人もで乱取りを行って殺してしまった事件なんてものが平気で起きて、それを認めても来なかった本人及びその上司の様子を報道で見ていると、成熟した社会とはとても思われない。非常に幼稚な精神構造の上に成り立っているように窺えてしまう。
 上記記事で報じられている事件では、明記されている本人の上司が、注意をしたあとはそうしたことは行われていなかったので、自衛隊としての安全確認義務違反ではなかったと主張していたのに、本人がその後も被害者にそうした行為を行っていたと白状してしまった。にもかかわらず裁判官が「隊員の自殺を予見できなかった」と断じたことの理由はなんなのかという論拠が明白でない。
 情けなくなるほどの未成熟社会である。その辺の三流大学の体育会ではあるまいし、こうした事例を徹底的に払拭するという方向に動こうともしない組織には必ずおかしなウラができてくる。
 実は徴兵制度で成り立っている隣の韓国の軍隊も同じような体質にあるらしくて、兵役を終えて日本にやってきた留学生のひとりが私に吐いて捨てるように「軍隊なんてろくなモンじゃない」といっていたのがとても印象的だった。