ほぼ足りてまだ欲 その先

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ゴールデン・ウィーク

 ゴールデン・ウィークというと,あれはバブルの頃のことだったか、必ず群馬県の山の中に出掛けたものだった。10年くらい続けただろうか。本当に人の手が入っていない山なんてのはそうそうないけれど、そこは人の手が入りすぎるくらいに入った山だった。と、いっても人工的なリゾートでもない、という不思議な表現になってしまうのだけれど、さんざん鉱物資源を露天掘りした跡地を、埋め戻して植林をしたという、一見かなり自然の豊富な、というよりも自然そのものの様相を呈している地域だった。
 そこに毎年テント一式を持ちこんでいた。ところがその界隈ではゴールデン・ウィーク中はまだまだ春到来をしていないのが普通で、桜のつぼみはまだ堅い。ただし、タラの芽やフキノトウなぞの山菜類はそろそろ出かかっているという状況である。クレソンなんぞは摘んできてお浸しにする、天ぷらにするで食べてしまう。
 しかし、時として雪が降る。まだ春が来ていない証拠をお見せ下さるかの如くにである。だから、テントでいるとちょっと、というよりはかなり辛い。そこには廃棄された電信柱を使って組んだ三角小屋があった。大型三角型テントを木で作ったようなものだ。ただし、寒さは防げない。それでも重要な武器、蒲団があった。蒲団の中で着込んで寝袋に入れば充分に寝られるのだ。
 そんな雪の中炭づくりに長選したことがある。何時間も炊き続ける。その火の番は暖かいから良いのだけれど、時々近くの木の枝から雪がばさばさと落ちる。それがクマが出たような音に聞こえたりする。ぎゃっ!と逃げる。そぉ〜っと様子を見に行く。なんちゅうことはない。また火をくべる。そんな繰り返しの挙げ句に翌朝釜を開けると、殆ど焼けちゃっていたりするのである。やれやれなんだけれど、そのプロセスが楽しいという遊びである。
 あそこに向かう車は、これから始まることへの期待でワクワクだけれど、帰りの車の中はまた、実を結ばない仕事に戻ることを考えるとぐったりだった。
 そんな頃のゴールデン・ウィークは指折り数えたものだった。今は指折り数えることが少なくなった。