ほぼ足りてまだ欲 その先

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業界再編

平成22年の世界の建造量のシェアは、中国が37.8%、韓国が32.9%だったのに対し、日本は21%まで落ち込みました。(NHKニュース1月30日 18時16分)

 栄枯盛衰は世の習いで、とうとう日本の造船建造量はここまで落ちてきた。日立造船日本鋼管の造船部門が合併してできたユニバーサル造船IHIマリンが合併してユニバーサル造船となるんだそうで、建造量からいったら世界第7位のシェアとなる企業になるんだという。これから先はどんどん日本のシェアは落ち込んでいってどんどん合併していくことになるのだろう。なにしろ日本の造船業界が業界再編をいいだしてからもう何年も経つわけで、ここ何十年間の日本の造船業界は業界再編の日々だったといっても良いくらいだ。
 そういえばこの国がバブルに踊っていた頃、中国、上海の造船所にいったことがある。現場のヘルメットは竹籤のようなもので編んだもので、歩いていて鋼材に頭が触れた時ぐらいは効果がありそうだけれど、殆ど気休めみたいなものだった。正午前だというのに造船所の構内には白いホーロー引きの番号がついた洗面器を持って歩く従業員ばかりだった。それが食器で、自分の食器を持って食堂に向かって歩いているのだった。鋼材置き場には腐ったような鋼材が積み重なっていて、こんなになる前に要らないんだったらスクラップで売ってしまえばいいのにと思ったけれど、そんなことにしたら計画が間違っていたことになって幹部におとがめがあるらしい。
 仕様書を渡して見積もって貰ったらやけに総重量が大きくて、何事が起きたのかと思ったら、今入手できている鋼材で見積もったからで、指定した鋼材は現実的に入手困難なのだという。当時は輸入だったのだ。
 それなのに艤装岸壁には8万トン級のタンカーが艤装中だった。結局仕事にはならなかったけれど、あの時の現場からとても想像ができないというと、大笑いされてしまうくらい、世の中は大きくその軸足を動かしてあっちの方にいっちゃったというわけだ。
 たった30年ほど前、欧州各国の造船業界から、ダンピングするな、卑怯だぞと眼の敵にされた日本の造船業界も、もうここまで来てしまっているらしい。それは時代の流れで致し方がない。中国はどうか知らないけれど、韓国あたりももうそろそろ他の国にとった代わられるだろう。ただ、この業界は労働集約産業だけれど、それほどではないとはいっても設備が必要だし、エンジニアリング能力が必要だ。新興国がのし上がってくるにはこの両方が必要で、先進国から資本と技術を持ってこないと育たない。かつて日本政府はアジア各国からの技術者を育てるために政府予算をつけて彼らを招聘し、各地の造船所で研修させてきたし、定年退職した技術者はどんどん、韓国・中国の造船企業に雇われていった。
 今でも日本の国立大学では造船工学を勉強する学生というのがいるのだろうか?それとも中国人留学生で成り立っているのだろうか。それとも、もうとっくになくなってしまっただろうか。
 これは資本主義社会の当然な成り行きなのだから、どんなことをしてもこの流れを止めることはできないし、それをしたら非常に不自然なことになる。しかし、これしか産業として考えられないのであれば、そこに重点を置いた政策をとるしかないだろうけれど。
 今日本の造船業の大半はその労働者を派遣や外国人研修で凌いできているのではないだろうか。