ほぼ足りてまだ欲 その先

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65歳

 私が二回卒業した大学は先生方に定年があって65歳である。私たちは昨年4月2日以降今年の4月1日までに65歳になる。これで公の施設ではシニア割引が適用されるようになる。つまりあっちもこっちも私たちを爺と公認したのである。
 で、自分が卒業した大学で教師をやっていた同期の先生が昨年65歳になって、ついに定年退職となった。彼は沖縄鹿児島の出身だけれど、大学では一クラス分しか学生のいない教育学科の卒業だった。私は1250人も学生がいる経営学科の卒業だった。これだけですぐに想像がつくように、彼の学科は真剣に勉強をしている学生達で、私たちはほとんど学校にもまともに来ないような学生達だった。だから彼は大学の教授になり、私は一介の爺さんになった。それが、二度目に大学の新しい学部に入ってみたら、そこに彼が教授としていた。それまで面識もなかったのだけれど、話をしてみて同期であることが判明してびっくりした。
 彼の研究室は何時でも学生で溢れていた。溢れすぎていて、彼は自分宛に電話がかかってくると子機を持ち出して研究室の外で話していた。それくらい学生に研究室を開放していた。研究室に学生が溢れている先生は概ね何時でも学生の中にいるということである。そのためには研究室の中に人が入ることができる状態になっていなくてはならない。そういう観点で見ると、研究室の状態は二つにはっきり分かれる。他の一方は書類や書籍が信じられないほどに山積みになっているものである。しかし、私はその種の研究室を否定はしない。しないというよりは否定できない、というべきである。自分の机がそういう状態だからである。しかし、中にはそれ以上で、研究室の中を歩くのは獣道のような一筋しきゃ存在しない、という人だっているのである。
 で、彼の部屋には学生が溢れていた。それだけ彼の研究室は敷居が低いのである。何時いっても誰かしらがいるけれど、先生はいないという状態もいくらでもあった。
 彼の授業をとって卒業生のおばさま方と合宿にいったこともある。酒を飲まない彼は学生、特に女学生にとってはより距離が短かったのかも知れない。
 かつて「退職したら地元に帰って鍼師になるんだ」といっていたけれど、どうやらそれは断念したらしい。