ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

インキャット社

 豪州タスマニア州ホバートにある造船所。
 いざというときには防衛省が輸送船として徴用し、乗り組みは自衛官として稼働することにするために、自衛官経験がないにもかかわらず予備自衛官にしてしまおうという計画に防衛省が進んでいる、かつての東日本フェリー所属だった(その後、津軽海峡フェリー所属となり、現在は「高速マリン・トランスポート」が所有)「ナッチャンWorld」と「ナッチャンRera」、そして佐渡汽船が走らせている定期航路で就航している「あかね」の三隻が日本で就航しているインキャット製の双胴高速船です。ここの双胴高速船は海軍で高速輸送船としても採用されているという実績を持っています。
 双胴船というのはこれまでもしばしば登場する観光船、あるいはフェリーの特徴でもありますが、甲板を広く作ることができるので、フェリーに向いているわけです。しかし、高速で運行するためには造波抵抗などの点で問題があって、実現しませんでした。
 20数年ほど前に、「波に乗る」のではなくて、「なみを突っ切っていく」、つまりサーファーが沖に向かうときにボードで波に乗り上げていくのではなくて、波を突っ切っていくように走る船型が開発されてきたのです。それをwave piercing型といいます。イヤリングのピアスの動名詞です。
 その船型の研究で世界を遥かにリードしてきたのがホバートという田舎町(とはいってもタスマニアの州都です)にある造船所なんです。
 造船といったら日本がリードしていたものでしたけれど、実は豪華客船の世界ではまったく役立たずで、もっぱら欧州の、それもイタリア、ドイツ、デンマークなんてところあたりの造船所ですが、豪州の造船所がこんな高速双胴船の分野で先端にいるとはびっくりです。
 日本の造船業界でも、この分野の研究をしていなかったわけではありません。しかし、どんどん先を越されていってしまいました。様々な業界で同じ轍を踏むのですが、この分野でも法的規制がかなり問題になりました。
 外国から船を買う、そしてそれを日本の航路に就航させるという点でもやっぱり壁がありました。それは海運局による規格検査の問題でした。船は必ずいずれかの船級協会による建造中の検査を義務づけられています。それがなされないと、保険にも入れて貰えない、融資に支障がある、そして何よりも安全が確保されているのかどうかがわからなくて運航が許可されません。それが外国航路の船ならば、ロイドだとか、アメリカ船級協会だとかの検査をして貰いますが、日本の沿岸、近海を走る船は海運局による検査が必要とされました。それを業界ではJG(Japanese Government)船級と呼んでいました。だから、インキャットの建造中の検査をどうしたのだろうかと、それが不思議でした。
 どうもこちらのブログを拝見すると日本から現地へ海運局が長期出張検査にいったようにも思えます。
 この船の契約が決まったとき、今の在日豪州大使が嬉しそうに話していたのを想い出しますが、ナンチャン2隻が定期航路についていない現状をどう捉えているのでしょうか。