ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

散歩

f:id:nsw2072:20190719035823j:plain:w360:left 昨日は必要があって、割と鮮やかな色の赤いTシャツが欲しいと思って、銀座に行った。ここのところほとんど入ったことがなかったあの大きなUNIQLOに行けばあるだろうと踏んだからだ。
 例によって都営浅草線に乗って、東銀座で降りる。こんな時間なのに、地下鉄の端っこの優先席は若い人たちで埋まっている。良く見るとその半分くらいは外国人観光客家族で、その座席の意味がわからないらしい。車両を変えて座る。
 歌舞伎座の傍に古本屋がないだろうかと電車の中で検索したら、文明堂の傍にありそうで、それなら寄って台本の類いがないか、探してみようと思い立った。エスカレーターで上がったら、某ビルの2階にその古本屋の名前が表示してあったので、狭い階段を上がってみたら、確かにそれらしい扉があった。入り口には噺家の落語会のチラシが貼ってある。しかし、全く人気がないどころか、扉の脇には「Don't Enter」とまで書いてある。どういうことなのか、訳がわからない。午後にならないと開かないのかもな。
 しょうがないから歌舞伎座の大きな看板をじっくりじっくり見ながら行くと一幕見の三階券を求める人たちが椅子に座って行列している。松竹もサービスするねぇ。ウィーンのオペラハウスだったら当日の立ち見の人たちは、自分で小さな折りたたみ椅子を盛ってきて座っているってところだ。
 そういえば、京都の南座中村獅童初音ミクと共演するんだといって、「歌舞伎俳優の中村獅童と、バーチャルシンガー初音ミクが夢のコラボ!伝統文化「歌舞伎」と、最先端技術「ボーカロイド」が融合した「超歌舞伎」今年はなんと、南座初登場!!」という大きな看板が立っていた。こんな超歌舞伎を婆さんが見に行くわけはないのであって、暑い8月、夏休みの子どもたちが、おばあちゃんに奢って貰って見に来るのを狙っているんだろうか。こりゃ松竹もいろいろ考えているんだろうなぁ。
 ところで海老蔵が急性咽頭炎で休演だと聞いたけれど、これって、声が嗄れちゃいました、って奴かな?役者もボイス・トレーニングなんてやるのかね?やらないと、すぐ嗄れちゃうだろうなぁ。『素襖落』(すおうおとし)の太郎冠者は右團次が代演だけれど、外郎売実は曽我五郎は演出変更、夜の『星合世十三團』はやらないんだっていう。
 昭和通りの角まで来たら、なにやら大きな声がする。なんだ、なにか事件なのかな?と思ったら、国民民主党女性候補の選挙演説だった。しかし、本人がどこで喋っているのかわからないし、通りかかりの人たちは、昼飯時だからなのか、演説どこ吹く風という雰囲気で歩いていて、チラシすら受け取らない。多分この時間にこの辺を歩いている人たちのほとんどは東京選挙区の人じゃないのかも知れない。当然かなりな割合で、神奈川、埼玉、千葉の人たちじゃないだろうか。すると、こんな時、東京選挙区の候補者はいったいどこを歩いているんだろう。
 三原橋の工事はいったいいつまでかかるというのかなぁと思いながら歩いていると、空はどんどん雲が晴れて、青空が出てくる。そうなると、こりゃ暑い。汗が噴き出てくる。そうだ、水を持っていないなぁ。危険、危険。
 中央通りにやってくるとそれはそれは凄い人出、平日の、それも夏の、真っ昼間だというのに、人を避けて歩くのが大変。そういえばみゆき通りにあった某銀行の支店がなくなってしまっていて、通帳記入をどうしようと思った。やおらタブレットをとりだして、探すと、昔のデパートがあったところに1-2年前にできたビルの中に入っている。このビルの前に何度も来たのに、気がついていなかった。こういうところが歳をとって家にばかりいるものだから、気が張っていないんだろう。だって、随分ここは歩いている。
 UNIQLOに入ったらそんな理想的なTシャツは売ってない。790円の値札がついた投げ売りTシャツは手触りは悪いし、色が気に入らない。多分向こうもこんな日本人の爺さんは気に入っていないだろう。なにしろ、中国語がメイン使用言語で、その次くらいはアラブ系、もしくはインド・パキスタン系じゃないだろうか。次くらいが非英語系白人だろう。
 それじゃ、滅多に行かないから、並木通りの無印良品に行ってみようと思って、晴海通りを並木通りの信号で渡る。ふと気がつくと、TEIJIN MEN'S SHOPから晴海方面にかけた歩道に、昼休み中とおぼしきサラリーマンやらOL(今でもそう呼ぶのかね?)の人たちが一斉にスマホを掲げて、それをじっと見て停まっている。多分例のアニメのなんとかってやつだろう。まだやってんだ、こんなこと。それもいい歳をした男女だ。気がついたら新橋側にもいるみたいだ。ついていけないねぇ。
 もちろん無印良品にはそんな赤いTシャツなんて売っているわけがない。普通の白とかグレーでも良いか、と思ったら、もう丁度良いサイズなんて全然なくて、S-MとかL-LLだったりして、あ、そうか、もうシーズン外れなんだと今更気がつく。しかし、真ん中サイズが払底しても、小さいとか、大きいサイズは残っていることを考えると、どうして、真ん中サイズに偏った発注をしないんだろうか。いやいや、こんなその辺の爺さんが発想できるくらいのことは、これだけのグローバル企業が発想しないわけがない。だから、これには多分相当深い読みがあるのだろう。より小さい方はキッズに廻し、大きい方はアメリカ店に回すとかね。あれ?無印良品だってアメリカに店だしているんじゃないの?お〜、そうだ!MUJIという店を海外でも良く見るものねぇ。最初に見たのはバルセロナだったかも知れない。
 しょうがないから、一階のレトルトカレーの前を通りかかって、あ、そうだ、これだけ評判になっている無印良品のカレーだから、自分でカレーを作るためのスパイスミックスを作ってやしないか、と思った。で、品出しをしていた、おばさまにお伺いしてみると、少々お待ちを!といって担当者だという若い黒服の青年を連れてきた。この人にその話をすると、残念ながらといってないことがわかった。彼はこんなお客のニーズをくみ取って、企画につなげたかなぁ。
 そろそろ時間だと思って三州屋銀座一丁目店にむかう。その前に本屋に行けば良かった。この読み間違いで、予定の歩数を大幅に超える散歩をしてしまうことになった。午後1時半頃の三州屋銀座一丁目店(私は銀座二丁目店が苦手で絶対にこっち)に足を踏み入れると、一番奥の大テーブルに歳の頃ならアラカンの男子三人が定食を食い終わりながらビールと日本酒に手をつけ、仕事のやり方がどうのこうのと、この年で今更なにを言ってんだと口を挟みたくなるような話をグダグダとやっている。私は真ん中の大テーブルの奥に若い男女が向かい合っている端っこに席を占める。いつもの海鮮丼。あっという間にやってくる。ナメコのみそ汁が熱くて旨い。しかし、今日の海鮮丼はご飯が炊きたてじゃない。ゴロゴロする。シメサバが入っていない。それでもやっぱり旨い。おばさんがやっぱり耳が遠くなっているのを若いふたりは知らないらしくて、小さな声で「領収書下さい」といった。あ、多分おばさん、全部聴いてねぇなと思ったら、やっぱり聞き落としていた。
 教文館に寄って、裏から二階へ入る。集英社新書大竹まこと「俺たちはどう生きるか」と、ちくま文庫で「井上ひさし・ベストエッセイ」を入手。大竹まことは随分大上段に振りかぶったタイトルを編集者がつけたもんだと。ラジオで集英社の編集者が5年も待ったと。何も云わずに盆暮れを置いていったと。どんどんその気にさせられたと。編集者が巧いといっていた。そういえば、むかし良く一緒に呑んだあの集英社の編集者はさすがにもう仕事はしていないだろうなぁ。彼から塩野七生の本をせしめた記憶があるなぁ。
 ところで私は井上ユリなる名前を今までに聞いたことがなくて、つまり井上ひさしにはこれまで話の特集を中心に、あれほど接していたような気がするんだけれど、全くこの名前には記憶がない。一体誰だよ、と思ったら井上ひさしの後妻だったのだ。なんにも知らなかったなぁ。そりゃあまりにも好子の名前が強く印象に残っていたからだろうか。井上ユリは米原万里の妹だというじゃないか。知らないにも程がある。とはいえ、私は米原万里が2006年に癌で死んだのも良く知らなかった。彼女といえば『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』を電子版で一気に読んだくらいで、これは実に面白かったし、雪解け前の鉄のカーテンの内側にいた共産党系の各国人の凄まじい暮らしが興味津々だった。あとで聞いたら大宅壮一賞を取った作品だと聞いた。米原姉妹との繋がりで、この文庫本の解説を佐藤優が書いているという訳か。井上ひさしになんで佐藤優だろうと不可思議だった。

 古希を迎えた大竹まことが、近頃格好良すぎる。格好良すぎる奴はむかつく。彼が文化放送で午後一時からやっている「ゴールデン・ラジオ」が好きでその時間はダラダラ流して聞いている。『人の数だけ物語がある。ザ・ゴールデンヒストリー』というのがあって、どうやら何人もの放送作家を叱咤激励、というより、叱咤し続けているらしいことが、彼の喋りから想像されるが、この本の論調がどうもそれに似ている。このコーナーは集大成されてCDになって売られている。

井上ひさし ベスト・エッセイ (ちくま文庫)

井上ひさし ベスト・エッセイ (ちくま文庫)


 最後は明治屋に寄ってナイル商会のINDIRAカレーを買ってきた。夕飯でドライカレーにしたかったから。蒸し暑い日のドライカレーは旨い。
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