ほぼ足りてまだ欲 その先

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83歳

 和田誠が死んだそうだ。83歳だという。その年齢まであと10年ちょっとしきゃない。いよいよ、覚悟をする頃合いがやってくるってことだと思った。そういえば、寝床から起き上がるのが厄介になった。こんなことになるんだと、今頃になって気がつく。なんでみんなベッドみたいに場所ふさぎな寝床で寝るんだろうと思っていたが、こういうことだったのかと気がつく。それはこれだけのことではなくて、あちこちで今頃になって気がつくことがある。階段の手摺りがこんなに有効なんだとは、というのもある。だから、階段の途中で手摺りに寄りかかって、スマートフォンをいじっているのはやめて下さいね。

 和田誠の奥さんは平野レミだ。あのフランス文学者〔と私は聞いている〕の平野威馬雄の娘で、若い頃、TBSのラジオで「おっとこが出るか、女が出るか!」と叫んでいた料理評論家というか、騒々しいおばさんだ。平野レミよりは平野威馬雄の方が先に知ったんだろうと思うが、私がフランス文学に興味を持ったことなんてないんだから、当然その名前は雑誌「話の特集」で知った。和田誠ももちろん「話の特集」から知った。彼は「話の特集」には欠かせない存在だったらしい。

f:id:nsw2072:20191012040335j:plain:w240:left 2005年に「話の特集」の編集・発行人だった矢崎泰久が創刊40周年と銘打って出版した「話の特集2005」という本によると毎号欠かさず登場していたのは長新太だったらしい。あの人の絵はインパクトがあったなぁ。どういう頭の中身なのか、次から次に繰り出してくる奇想天外な展開にはいつもながらあっけにとられていた。あれだけ毎号買っていたのに、全部残っているわけではないというのには訳がある。引っ越しをする度に、「そうだ、この際だから、不要なものは捨てるんだ!」といって私の青春を一緒に捨ててきてしまったのだ。ほんのちょっとだけ、まだ残っているが、開く度に、「おい、あんなことやっただろ!」と古い雑誌が私に迫ってきて、その都度「ごめんなさい!」と心の中で謝るのである。ひょっとすると死の間際に、周りの人間がそれまで聴いてもいなかったことをボロボロと白状して「ごめんなさい!」と誤りながら死ぬのかも知れない。

 あ、そうだ、和田誠のことだった。知り合いのイラストレーターによると、認知症が進んでいて、大変らしいよ、ということだった。それを聴いてまだそれほど時間が経っていないので、ちょっと驚いた。

追記:久米宏が、麻雀の師匠だった和田誠平野レミを紹介して欲しいといわれ、言下に「ダメですよ!あんな女!」といい放った一週間後にふたりは結婚したという。久米宏平野レミはラジオで「おっとこがでるか、おんながでるか!」とやっていた。(TBSラジオ「ラジオなんですけど」2019.10.12)