ほぼ足りてまだ欲 その先

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訃報

 近頃は様々な訃報が入ってくるので、珍しいことではない。しかし、昨日もたらされた訃報は、怖さを知らなかった若かった頃のことを想い出させるものだった。
 彼の享年はわずか68歳。一体何があったんだろう。私が勤め先の会社を辞してから、彼に逢ったのはもう20年以上前のことではなかっただろうか。名古屋近郊の街の出身で、確か彼の父上の葬儀に参列するために名古屋の駅から名鉄に乗った記憶がある。あの路線にはもうそれっきりだ。彼は京都の私大をでて、私の2年後から同じ工場だけれど、全く異なる部門に配属されていた。全く接点がなかったのに、唯一の接点が、彼が業務でテレックスを撃たなくてはならなくなって、それを手伝ったところから始まった。その三年後に、同時に東京の本社の同じ部門に異動になった。当時、本社では海外の仕事を本格的に拡げようと、全国の拠点から、若手を集めた。その中に私も彼も入っていた。ところがなんということか、それから三年も経たないうちに、会社の方針ががらっと変わり、その分野から撤退をするという。後から考えてみたら、当時のトップが認知症を病み始めたところで、そんな昔のことだから、若年性症状を疑うことができなかった。突然の翻意だった。
 まさか全員をまた元に戻すわけに行かないから、本社の各部署に分散させ、それぞれが自立を目指す。当時、受注範囲を拡げていた部署が大型プロジェクトを受け、それらのプロジェクト要員として分散され、東南アジア、アフリカ、中東にそれぞれ分散された。それからはもう彼とは接点はなくなり、彼は国内分野の営業に転進していった。
 その無聊を託っていたわずかの時期に私たちはよく飲みに街へ出かけた。それで憂さを晴らしていたわけだ。だから、同じ企業で縁を得ていたとはいえ、ほとんどつきあいがなくなった。どうして、この歳で他界してしまったんだろう。