ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

中華街

 横浜駅から私鉄でひと駅の実家では、お祝い事や、何かがあると、家族全員(といっても5人だけれど)で、横浜中華街に出かけたものだった。一体何がきっかけだったのか、知るよしもないが、そんな時に上がるのは中華街の善隣門から入って割と近いところの右側にあった「太平楼」という店だった。二階に上がるのが常で、まず頼むのは「コーンスープ」だった。中華料理のコースとしてはこの種のスープはあとから出てくるというものなんだと知ったのはもうずいぶん後になって、宴会や、友人の結婚披露宴なんかでフルコースを愉しむ時になってからだった。
 そしていろいろ、頼むのだけれど、必ず頼むのが「ウズラのタタキ」というものだった。今じゃこんなメニューをどこでも聴いたことがない。挽肉が甘辛く筍や野菜と炒めてあって、それが油で揚げた細かい春雨のようなものとぐじゃぐじゃに混ぜて食べるというもの。その舌触りの面白さもあって、大好きだった。締めがこれだったくらいだから、他に頼むものも、普通日本の中華料理屋で普通に頼むようなものはひとつもなかった。だから、長ずるに及んで友人達と中華の丸いテーブルを囲むときに、酢豚や餃子を頼むのを見ていると、何だかひとつ納得ができなかった。
 しかし、それも、長姉の亭主が中華料理が苦手だ、という理由で、彼等の結婚以降全く家族で中華テーブルを囲むと云うことがなかったのがとても残念至極だった。そうこうしているうちに「太平楼」はなくなってしまった。今もって心残りである。