平凡社の雑誌「こころ」は2011年6月創刊、2020年8月の56号で休刊に至る。
前にもこの雑誌のことは書いたことが何度もあって、どれほどこの雑誌が好きだったのかがわかる。
その46号、2018年12月刊行号から三号にわたって半藤一利が「語る自伝」を連載している。
これが平凡新書から「わが昭和史」となって昨年の4月に刊行された。
実は今になって気がついたんだけれど、この頃の「こころ」には星野博美が「旅ごころはリュートにのって」を連載している。今どき珍しくリュートを習うというところから始まる。
私がリュートを初めてみて、その音を聞いたのは大学生の頃だから、もう半世紀以上昔の話だけれど、当時慶應義塾高校の生徒だった幼馴染の孝二くんがクラッシックギターを習っていて、その先生のリサイタルを東京文化会館の小ホールに聞きに行った。とても感銘を受けたのだけれど、自分は当時とっくにThe Beatlesの熱にかかっていたので、落ち着いてそのジャンルを聴くにはとても至らなかった。当時大学のスペイン・ギターの定期演奏会を聞きに行ったりしたのだけれど、スペインのギター文化や、バロックのそういうジャンルがあるんだなという認識でしかなかった。バロックを本当に聴くようになったのは、ようやく還暦を過ぎたくらいの頃からにすぎない。皆川達夫先生がいたんだから(しかも大学一年のときは担任だった)、少しは興味を持っても良かっただろうに、全く歯牙にもかけなかったのである。馬鹿が馬鹿たる所以は価値観がわからないということだと、良く分かる。
COVID-19蔓延以来遠ざかってしまっているが、大塚先生のアンサンブル・コルディエもそれまでの数年間は毎回東京文化会館の小ホールに出かけていた。歳を取らないとわからないことというのはいくらもあって、そこに至るまでに人生を終えてしまった人たちには本当に気の毒に思う。