ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

石原都知事

トーキョー・ワンダー・サイト

 Tokyo Wonder Siteというものがどんな施設なのか全く知らず、今回話題になって初めて聞いた。日本の若手アーティストの登竜門のひとつで、すでに都内に三ヶ所の拠点を持っているのだという。2001年に本郷に開館、2005年に渋谷に二館目を開設。2006年、国連大学旧研究研修センターにアーティスト・イン・レジデンスという施設である、青山:クリエーター・イン・レジデンスを開館。
 サイトにある館長(今村有策氏)の言葉には「クリエイティビティ(創造性)こそが人間の証です。生きるとは、創造的な行為であり、実はその様に理解されていない、政治や経済も創造的な行為なのです。」という言葉もある。なんだかこういう気持ちで読むせいか都知事にヨイショしているようにも聞こえてしまう所がおかしい。相当この館長と都知事は親しい様子が窺える。この施設のサイトには知事の言葉という頁も用意されているらしいのだけれども、今はなぜか「under construction」と記載されていて何も掲げられていない。
 今村館長によると「御茶ノ水(本郷の施設のこと)に関しては、公務員の夏のボーナスを計算する為だけに、期間限定で使われていた建物とのこと。ビックリした。まさにワンダーサイトである。建物自体は戦前からあるものでさまざまな使われ方をしてきた様である。渋谷の場合は都が運営するパソコンに関する相談室だったようである。今村さんは「東京都には無駄な使われ方をしている物件が多くある」とインタビューに答えているのだけれども、その「期間限定で使われる」というのはどういうものなのか悩む。ひょっとするとこんなハードを東京都はいくらも持っているのだろうか。そうしたものを若手の育成に用いるのはとてもいいことだし、役所仕事としてはなかなか進んでいる。趣旨は頗るよい。
 石原都政になってから「都民カレッジ」があっという間に閉鎖されたりして甚だ評判は良くないし、東京都の文化施設でいうと現代美術館では、予算がこの五年間で三割も減らされているのに対して、ワンダーサイトは別格で予算はふえ続け、ワンダーサイトの事業収入は今年度は千二百万円なのに、東京都の補助金は事業収入の四十倍の四億七千万円も出されるなど、まさに破格の扱いとなっているそうである。そもそも若手芸術家育成というのであれば、現代美術館でやればよいことだという意見(阿修羅)もあるし、私も賛成だ。このサイトによれば、株式会社ライフスケープ研究所(ワンダーサイトの設計監修)の今村有策氏が参与として知事から委嘱されたのは、ワンダーサイトが竣工する5日前で、今村氏はワンダーサイトの館長に、妻の家村佳代子氏が副館長に就任。つまり今村夫妻は参与、館長、副館長という三つの役職の報酬を受けているということになるわけである。
石原都知事は「あれ(トーキョーワンダーサイト)はまさにトップダウンです。トップダウンですよ、私が考えついたんだからね。」(石原知事定例記者会見 2006年9月29日)といってはばからない。
 石原知事の四男延啓(のぶひろ)氏(ほとんどのマスコミは彼の名前を明らかにしていないが赤旗は実名を掲載しているし、会見では質問者も実名を口にしている。)は2003年3月1日に「トーキョーワンダーサイト」に助言、意見をする芸術家として、外部委員「アドバイザリーボード」の委嘱を受けた。委員としての報酬は受け取っていないという。しかし、委嘱の期間は3月31日までの1カ月間だけ。都職員らと一緒にドイツ、フランスを訪れた際、費用計55万円を都が全額負担していたことが22日、共産党都議団の調査で分かった。四男はその後も参与らの海外出張に数回同行しているが、都は出張費を負担していない。(Asahi.com 2006年11月22日22時31分)
「ワンダーサイト」に飾られているステンドグラスの原画の作者というのが自称画家の四男で、「お買い上げ」費用は300万円。都の補助金が使われているそうである。こちら(gendai.net 2006年11月24日)
 東京都の文化施設に関する予算を赤旗が掲載しているが、東京都江戸東京博物館東京都現代美術館東京芸術劇場東京都写真美術館東京文化会館東京都美術館東京都庭園美術館は軒並みその予算規模が2002年度と比較すると2006年度は0.56から0.80に減額されているのに対し、このトーキョーワンダーサイトだけは2002年度の5589万円から4.7152億円と8.44倍となっているのだそうだ。絶対額でいうとこの8施設で69億3495万円(2002年)が50億9675万円(2006年)に減額されている中での話だから他の施設の予算が如何に減額されているのかが分かる。つまり東京都は芸術の主流への援助からいわゆる若手芸術家の育成にシフトしつつあるという様に読めてしまうというのはあまりにもいい過ぎか。
 まともなことも書かなきゃ不平等だ。トーキョーワンダーサイト渋谷では11月は蜷川実花(にながわ みか、1972年生まれ)、蜷川幸雄の長女、1998年、第9回コニカ写真奨励賞、2001年、第26回木村伊兵衛写真賞をそれぞれ受賞している写真家の写真展「永遠の花1」であった。12月1日から10日までは「デジタル・アート・フェスティバル東京2006@トーキョーワンダーサイト渋谷」が開かれる。

2006.11.24都知事定例記者会見

こちらにテキストがアップされた。
この一連について先週金曜日(11月24日)の都知事の定例記者会見で日本テレビの記者が質問をする(これは都のサイトから見ることができる。記者が「トーキョーワンダーサイトについてなのですが・・」と話を始めると知事はそれを遮って「その前にキミはあそこに行ったことがある!?」と訊く。記者は「・・私は行ったことはありませんが・・」と答える。

 「この中で行ったことのある一手を挙げてくれる?一回は行ってみて欲しいなぁ、うちの息子も含めて如何にたくさんの人たちがボランティアで参加しているのかということがあるしね、うちの息子もまぁまぁの芸術家だからね、ステンドグラスをただで、しかも、施設についても松下電器がね、ただでやってくれたんですよ。芸大の先生なんかもね、学生たちに進めてくれたりしているしね、とにかく問題にする前に見てきてよ。好き嫌いはあるかも知れないが見てきてよ、今度の4億円は青山の改装費があったからでね」と、あたかも現場に行ったことのない記者には質問する資格がないかのような勢いである。ここだけでも私なんかはカチンと来る。
 「彼(延啓)はね、慶応を卒業した後、ニューヨークのパーシモンっていうのかなぁ(なんのことやらわからない)、それだけに飽きたらずスクール・オブ・ファイン・アートというカレッジを出ましてね(こちらのサイトでは、スクール・オブ・ビジュアル・アーツ(ニューヨーク)卒業(B.F.A修得)とされていて、多分これがBachelor of Fine Artsのことかな?)ヨーロッパのことは彼にも責任があるのかなぁ、細川君という知り合いがいて能オペラをやりたいと言い出してね、私がシナリオを書いたのだけれども、とても普通でない契約をしたいといいだしたものだから、それを始末するために企画者であるワンダーサイトの嘱託として行ったんですよ。他に細川君とインティメイトな関係を持っている人がいるのかいないのか知らないけれど、それをプロデューサーのひとりである息子が調整するしかないだろう。分からない?私の四男だという前に芸術家としての人格だってあるわけだし、今村君の奥さんだって、顔は広いし、語学は達者だし、だからご亭主が主催者でいるんだからいいじゃないの。問題があるならば事務局が異論を出せばいいわけでしょ。ちゃんとした手続きをしているから問題はないし、事務局に聞いてくれ。息子だといったって立派な芸術家ですよ。随分ただで働いて貰いましたよ。僕はメディアの姿勢は問題あると思うよ。共産党は陳謝したんでしょ?こういう仕組みに乗ったか乗せられたか知らないが、各社はほとんど好意的に受け止めたかどうか知らないけれど、こういう仕組みには乗らない方がいいんじゃないの。肝心の共産党都議会議員が情報操作したと陳謝しているのに、各マスコミはこんな姿勢でいいのか。都の職員だってあなた方マスコミを信頼しなくなるよ。」

 いつものことだけれども、彼は質問を捉えてどんどん自分の主張に持って行ってしまう。読売記者は「事前レクを漏らしてホームページにフライングして書いたという点について陳謝しているのであって情報操作ではないとわれわれ新聞記者は認識している」と指摘。共産党の説明によると「「曽根はじめ都議の謝罪というのは、ブログ(ホームページ)で、事前レクをおこなったかのような書き方をしたことについて、である」とのことで知事の認識とは大きく異なっている。
知事はまだ続ける。
 「自分の息子だろうとだれだろうと役割を果たせる人を都の名代として意見を言う情報をとるというのは必要で、息子とはいいながら一応の絵描きだし、いろいろな人を知っているんだから利用しても同じだろう。」
日経新聞の質問
「延啓さんに手を引いて頂くという意向は。」→「いいじゃないの、ただでやって貰っているんだから。絵描きとして多くの人を知っているし、ただで人材を使えるというのはこんないいことはないよ。公式に近い、東京都を代表とした仕事をやる場合には、ごく普通の人に頼むのと同じことだよ。こういう芸術家はそんなにいないからね。」 次にこの記者が「いじめられた子どもに対して強く生きろといういつものメッセージなんだったら、あえて息子さんを起用しないで強く生きて貰ってもいいじゃないか。」はなかなか鋭くて面白かったのだけれど、激昂しているおじさんは→石原「余人を持って代え難かったらどんな人間でも使いますよ、私は。東京都にとってメリットがあれば。当たり前の話だよ。」と大声を上げる。
 そして「トーキョーワンダーサイトを私物化しているという指摘があるが」という質問に対して反論をとなえ、「私物化とは何か、私が所有しているわけじゃない。人事的に親しい人間に頼んでいるが、今村君のキャリアーを知っているのかい!?近代美術館、現代美術館だって写真美術館だって、コンテンポラリー・アートをどれほどの人が知っているというのか。やっぱり経営してもらえなくちゃ。」大変お怒りで(まぁ、自分がやってきたことにきっちりケチをつけられちゃっているんだから当たり前だろうね)発言を遮り、恫喝する(もちろん彼は「こんなものは恫喝なんていわない」というのに決まっているが)と若手新聞記者は何も言えなくなってしまった。この知事もまたこの記者会見が公にされていて、見ているのが記者だけではないという意識を忘れている。本当に裸の王様になっていることがくっきりと見て取れるからこの公式会見はこっちが腹が立つけれども、こんないい加減な男を知事だといってあがめている、われら都民は日々これを反省するために見た方がよいだろう。
 次の質問「全国知事会で官製談合について話が出ましたが、知事という職務に問題があるのか、個人の資質に問題があるのか。」→石原「隣に座ったある県の知事とも話したが、(あぁいう行為=談合&収賄)大胆不敵というか、多選を禁止するべきと云う話も出たが、長野の以前の知事だって多選だったけれど、悪いことしてきたわけじゃないしねぇ(いやいや、相当に悪かったでしょ、彼は。オリンピックの時の書類をなくしてしまったことにしたんだもの!)。談合についてはこういう時代ですからねぇ、人間が人間と話し合うというのは危ないと思うねぇ。多選を国が法で縛るというのはねぇ、私は自分で律しているからだけれども、人間はいろいろな問題があるねぇ。あんな会議は出たってしょうがないよ。紙を見ているだけだし、なんも決まらないんだから。」なんのことやらさっぱり分からず。

なんだ、分かっちゃいないんだ、やっぱり

 ところで、2006年4月20日木場公園東京都現代美術館MOT)で「カルチエ財団所蔵現代美術コレクション」が開かれたそうである。「石原都知事のフランス語発言に抗議する会に報告がある。

 オープニングのセレモニーで、アートの普及に余念のない都知事はスピーチをした。「今日ここに来て、なにかすごいものが見られるんだろうと思っていました。ところが、実際は何も見るべきものはなかった。」「ここに展示されている現代美術は、まったくもって笑止千万なものである」と彼は付け加える。たとえば、先頃パリで人々の注目を集めたオーストラリアのロン・ミュエクによる巨大な彫刻作品「ベッドのなかで」も、石原には揶揄の対象だ。「ベッドのなかの巨大な母親像は、まるで赤ん坊のような目をしている。」ほかならぬ、この作品こそは、展覧会のポスターとカタログの表紙にも選ばれた目玉作品なのだ。そして「見る者に説明を要する現代美術というのは無に等しい。」そして、最後のとどめのように、「日本の文化は西洋文化よりもよほど美しい。」と発言した

のだそうだ。こりゃまた随分とずれの見られる発言じゃありゃあせんか。
 11月25日に民主党小沢一郎が彼を表して「驕れる」と表したのはまさに正解であり、みなの知る所である。

動く防犯の目ステッカーとBadboysステッカー

 都知事記者会見の冒頭に石原が得意げに掲げて見せた防犯ステッカー『動く防犯の眼』というものを見てびっくりした。あれは防犯ステッカーだったのか。なんとも品のないステッカーだなぁと嫌な気持ちがしていたのである。よく見ると歌舞伎の隈取りの積もりなんだろうけれど、私はBadboysのステッカーのパクリだとばかり思っていた。これがアートを標榜する都知事が宣伝するのはなんとも情けない。
 さて、ところで随分と奢った海外出張費のことであるが、彼は「あれは全て事務局に任せてあるんだから私は知らない」という。そうであれば、その事務局がきちんとしたコメントを出すべきであり、それをそのままにしているのは知事として怠慢のそしりを逃れ得ない。