ほぼ足りてまだ欲 その先

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NHKハイビジョン特集

 昨日の夜というか今朝早朝というか、NHK BS hiで「証言記録 マニラ市街戦〜死者12万 焦土への1か月〜」が再放映。たまたまお茶を飲みにテレビの前に出てきてテレビをつけて見る。このタイトルが以前に放映されたことは知っていたけれどたまたま見るチャンスがなかった。NHKのウェブサイトでは「太平洋戦争中、フィリピンのマニラで行われた日米の市街戦は12万もの死者を出した。そのうち市民の死者は10万。悲劇はいかに起こったのか、焦土への1か月をたどる。」とされていた。番組が終わったあとにこの番組の金本麻理子ディレクターが登場してそのインタビューがあった。彼女は平成19年度芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞しているのだそうだ。マニラの攻防は全くの市街戦で、ビューティフル・ダウンタウンと呼ばれたマニラの市街で日米が戦い、最後は米軍が砲弾をたたき込み日本軍を殲滅する。しかし、逃げまどう市民は米軍の砲撃にサラされる中、日本軍によって男性は抗日ゲリラ掃討を理由に片っ端から連行されて後ろ手に縛られて砲撃の前線に立たされ、あるいは地下壕で殺された。日本軍の死者1.6万人。米軍の死者1000人。そしてマニラ市民10万人といわれている。
 番組は現在のマニラの風景、当時の米軍が記録していたモノクロのフィルムを取り入れ、日本軍の生還者、日本軍に徴用された台湾人、米軍の生還者、家族から多くの犠牲者を出したマニラの市民たちが登場して当時の様子を涙ながらに語る。
 父と二人の兄を日本軍に連れ去られ、戦闘終了直後に母を亡くし一人になった女性が最後に「これまでこの事実を話すことはなかったし、こんな辛いことを想い出すのはもうこれっきりにしたい」と語る。ディレクターの話によると彼女はこの後「気持ちがすっと軽くなった様な気がする」と感謝されたともいう。米軍兵士の中にも「どんな理由があって私はあの地に立っているのかは分からなかったけれど、目の前の事態に対処するしか手段はなかった」といい、涙する。米国公文書館に残された資料から時の司令官は撤退を要請するが、参謀はそれを放置したと自らの手記に残していた。米軍にの「殲滅」攻撃方針は決定的に日本軍、市民への犠牲を増加させただろうが、日本軍の将兵を「徹底抗戦」といった言葉でまさに「放置」した従来の参謀のやり方を見ているとただただひたすら犠牲者を生んでいったプロセスが分かる。こうしたプロセスを日本人の「祖国を思う気持ち」の表れなんだと表現するのだとしたらそれは明らかに事実の隠蔽であることが明確だ。そしてこうした事実を胸に秘めたままこの世を去っていった人たちは枚挙に暇がなかったことなのだろう。
 この番組に登場する人たちは一様に当時の状況に思いをいたすことによって当時の感情を想い出し、涙して絶句する。そして何よりも大国の論理によって人生を簡単に終わらせられてしまった犠牲者がいる。この番組の中に現れたフィルムでも日米の市街地における銃撃戦の間に血を流して助けを求めるマニラ市民が倒れている様子が映る。それはまさに現在の某所の様子と見事に重なるのだ。