ほぼ足りてまだ欲 その先

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企業健保

 厚労省によって後期高齢者医療制度長寿医療制度)が創設されて高齢者を別口医療保険に組み入れた。この保険は社会保険というのには相当に無理がある。患者負担分(一割)以外の負担(つまり全体の医療費の九割)の半分は公費負担で国:都道府県:市町村=4:1:1という割合で負担する。つまり半分は税負担である。残りの半分の1/5つまり全体の1割をこの保険料で賄い、残りの4割を「後期高齢者支援金」で賄う。
 「後期高齢者支援金」とは一体何か、と聞いたら現役世代の保険料だという。つまり他の社会保険制度で集まった保険料を他の社会保険に天引きで持って行ってしまうということだ。
 これでは別口の社会保険制度にする意味を持たない。社会保険というのは本来的には広い裾野を持つ保険加入者がいて、それぞれが持ち寄った保険料でその中から必要が発生した人を支えるシステムだ。その保険から保険金を出して貰う必要のなかった人は、そんな事故が起きなくて良かったね、と祝えるというシステムだ。そのためには限りなく多くの人が参画することが出来て多くの保険料を集めることが出来なくてはならない。
 それでなくても日本の社会保険制度は実際には他の財源から、有り体にいえば国民から徴収した税を投入していてその部分はもう既に社会保険という体をなしていない。税負担でやっていこうとするのであれば、収入のなん%かを一律に「医療税」という形で徴収し、それを財源にして応能負担で医療を提供すればよい。現実にそういうシステムで運営している国もある。
 もう一つ、この国の医療社会保険のおかしなところはわざわざ保険加入者を分断してより小さな社会保険で運用しようとすることにある。なぜ、これほど複雑化してわかりにくくしなくてはならないのだろうか。
 今この時点で仮に患者の医療費自己負担を現役三割、75歳以上一割として全員が全国一律の国民健康保険一本にしたらどういうことが起きるのだろうか。ばったり成り行かなくなるのだろうか。そういうシステムだったらなぜダメなのかを教えて欲しい。素人考えは大体にして肝心なところの視点が抜けているはずだからその辺を解説してくれるといいんだけれど。
 企業健保というのは昔は大変に優雅で、箱根や熱海あたりに行くと、何とか株式会社健康保険組合保養所なんて看板が掛かってツツジの大きな株がきれいに丸く刈られていたりして如何にもお金持ちなんだなぁと羨ましく前を通ったものだった。金が余ったから組合員世帯に薬がぎっしり詰まった救急箱を配布、なんてことをやったりしていたのを友達のうちに遊びに行って発見したりした。私が現役で働いていた会社でもわずかながらそんな恩恵に浴したことすらある。
 それなのに、今や企業健保は解散の憂き目にあっているという。私は企業健保そのものの存続についてはそれ程問題視してはいない。国民全体がどのような職業に就いていようと皆ひとつの保険加入者となれば良いのではないのかという考えである。保険とは加入者の数が多ければ多いほどそのリスクは分散されるはずだと思っているからだ。