ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

パナマ

 といっても1914年に完成してから1999年まで米国によって管理されてきた、あの運河の話ではなくて、エクアドルの、植物で編まれた帽子のことである。
 カーッと照り返す太陽、み〜ん、み〜んと煩いほどの蝉時雨の中、麻の上着にやっぱりパナマ帽子を被らないと夏とはいえないと思ってみたりする。こういう時にこの帽子は実に快適だ。陽射しは避けてくれて、頭は蒸れない。しかるにその素材からしてやっぱり無理なのは雨に弱い点にもある。そして、湿度の高い夏なんだから被っている本人が汗をかく。脱いだときにこまめにその湿気を払ってやったとしてもどうしてもこの帽子は傷む。
 東京のちゃんとした帽子屋さんでこの種のものを求めると、驚く値段である。目の玉が飛び出る。だから、どうにかこうにか誤魔化し、誤魔化し数年は被ろうと努める。するとどんどんみすぼらしくなっていく。だったら諦めたらよいのに、一度経験したことを人間は忘れられない。一度拍手と共にスポットライトを浴びてしまうと、その拍手が義理拍手なのにもう忘れられなくなってしまう人があっちにもこっちにもいることを私は知っている。
 しかし、ここに時々救世主が現れる。ある時は外国で入った帽子屋さんだったり、またある時は繁華街の老舗のお店に入ったらその店の主力商品でもないのに、なぜかおいてあったりするのである。もちろん、良く見たらここに織りムラがあったり、あそこにリボンの糸が見えてしまっていたり。それでも(こんなことを云ってはおこがましいけれど)素人衆にはわからない。それでいて値段は一流帽子店の店頭のわずか五分の一だったりする。これで良いのである。多分リンボウ先生だったらこうした行為は気持ちを萎えさせるといったりするかも知れないな。あ、いや、そんなアメリカ人が被りそうなものは手にもしないか・・・。