春といえば由比の港ではサクラエビの季節だ。普通サクラエビといったら乾燥したピンク色したもので、私は子どもの頃はあれは着色してあるんだと思っていた。鯛の田麩なんていうと食紅で染まっていた甘いものだと思っていたから、着色してある割には甘くもないし、細い髭は口の中に刺さるし、なんでこんな食べものがあるんだろうと思っていた。清水にいた時には生しらす、生サクラエビといったものがチャンスに恵まれると食べることができた。友達の夫婦と一緒に4人でそんなものを食べにいったことを想い出す。
さて、ここのところ通っている台東区日本堤の明治通り沿いに蕎麦屋があって、そこで「生サクラエビのかき揚げ」があると聞いて立ち寄った。実は木曜日に雨の中行ったら定休日だったという経緯がある。稽古に行って早帰りのついでにそこに立ち寄った。
蕎麦でもうどんでも、冷たいものも暖かいものもあるという。今日は晴れている割には北東の風が吹いてそれほど暖かく感じない。だから温かい汁物が良いんだけれど、実は私は温かい汁の中に浮いている蕎麦ってものがだめ。それでかき揚げ天ぷらうどんして貰った。ところがこれが旨い。サクラエビはそれはそれで良いんだけれど、うどんもつゆも旨い。これならば、ざるに盛った蕎麦も必ずや旨いに違いない。
帰りに店名が珍しいとその由来を聞いた。店におられた女性の話だとなんでも名古屋のなんとかというお店から独り立ちした11番目の店だということと、大正11年11月11日に創業したからだという由来があるんだというのである。こりゃ面白い。