ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

散歩 カキモリでノート

 ここのところ、少し歩いていないなぁと思ったので、ちょっと散歩に出た。出てから、あっ寒い!とブルブルッとした。しっかり着て出たから良かったものの、手が冷たい。手袋していても手が冷たい。国際通り沿いの蔵前に昨年開店したノートと筆記用具の店(カキモリ)が気になっていた。確たる場所を確かめずに歩き始めてしまったので、まだかまだかと歩いたけれど、結構蔵前通りに近い方まで歩いて行った。
 とっても綺麗なお店でここなら何か面白いものが見つかりそうだという気分にさせてくれる。入って正面の壁は万年筆が並んでいて、その下に引き出しがあってそれぞれが内蔵されている。私の好きな子ども向けやら廉価万年筆の鉄ペン中心の万年筆揃いで気が楽。それでいて、ちゃんとペリカンウォーターマンもあるのだけれど、お店の方のお話にあるように比較的安いシリーズが並んでいて、はっきりいって私はとても嬉しかった。
 見慣れない、ごっついかんじの万年筆がペン先が特徴的な格好をしていて、これはどこかで見た記憶があるのだけれど、思い出せない。ところがこの万年筆だけなにも注釈が書いてない。ドイツのシュナイダーというメーカーのもので、IDシリーズというものだという。ちょっとスライド感が自分の好みとは違うかも知れないけれど、3000円程度のようだから、試してみても良いのかも知れない。
 このお店の売りは好きな表紙、好きな紙を使ってノートを組み合わせることができるということである。これが一度来てみたかった理由のひとつ。今の悩みは使っているノートが万年筆で書くと裏に多少インクが沁みてしまうものだから、裏を使いにくいということで、その趣旨をお店の方に説明すると、それならこの紙で試して下さいといってそこにディスプレイしてある万年筆を使って何種類かの紙に書いてみることができた。そして、ノートに紐をかけるようにもすることができる。B5サイズとB6サイズとそれぞれ黒い表紙のノートにして戴いた。
 組み立てをお願いしておいて、先を急ぐ。とにかく今日は行けるものだったら両国の回向院までいってみようというのである。蔵前から蔵前橋通りを渡り、蔵前警察の路地を入って大六天榊神社の横を通って、とにかく江戸通りには出ない。人形の昇玉、久月の裏を通って総武線のガードをくぐり、お稲荷さんの角で右に曲がってとにかく神田川の縁に出る。柳橋から久しぶりに神田川を見下ろしてみると真冬の昼下がりは寒々しい。そういえば25年ほど前にはこの辺で酒宴を持ったことが数回あったなぁと川面を見る。
 両国橋を渡り始めると川の向こうに東京スカイツリーが見えていて、ちょっと意外な思いがした。多くの人たちが吾妻橋本所吾妻橋方面に撮影にいって人がわんわんしているのに、こんなところからくっきりと見えたりするとなんだか、ご苦労さんだねぇと声を掛けたくなる。
 橋を東へ渡った直ぐの左手に交番があって、50代と覚しき警察官がたっていた。そのまま通り過ぎるんじゃ愛想がなさ過ぎるかもなぁと思って、「おまわりさん、この辺にトイレはありますか?」と聞くと彼は「う〜ん」といって返事がないのである。「公園とかないの?」と聞くと「両国の駅ですかねぇ」というのである。「ありがとう」といってそのまま靖国通りを東に行く。近所のトイレぐらいは知っていて欲しいなぁ。
 回向院といえば落語の「野ざらし」である。というとそれは落語好きな奴の話で、普通の人だったら鼠小僧次郎吉のお墓だろうか。そういえば昨日だったか、例の「伊達直人」にちなんでテレビでもこのお墓のことを報じていた。みんなして石を削りだしてその粉を持って帰るのだとやっていた。
 立派な門をくぐって、車の並んでいる前を通り過ぎ、立派なコンクリート製の本堂の前を左に折れると右手の方にどうやらそれらしいものが見える。私が行った時にはそこには人ひとりおらず、じっくりと見ることができたけれど、お墓の手前に削られるための石がたっていて、そこには削れた石の粉を掃き寄せるブラシや歯ブラシがおいてある。なるほど、これは上手くできている。
 裏口から境内を出ると、後ろの白壁には竹が生えてなかなか風情のある光景を呈している。
 靖国通りに面したところに「モス」を見付けて温かいコーヒーで、一休みをする。裏道を両国の駅方向に歩き出して見付けたのが「50円」「60円」の飲み物の自動販売機だ。これまで「100円」の自動販売機というのは結構見てきたんだけれど、この値段は一体どうだ!半額じゃないか。デノミってのはここまで来たってことなんだろうか。
 両国の駅前を過ぎると直ぐに今正に本場所が始まったばかりの両国国技館がある。昨年のあの大騒ぎから今でも入り口には大きな、それはそれは大きな看板が立ててあって「暴力団お断り」がしてある。本場所中の国技館というのは外は意外とひっそりと静かなものなんであるが、静かでないのが、力士達が出入りするらしいゲートの前で、そちらにはおじさんやお爺さん達が何人も立ち並んでいるのである。多分これは出入り待ちなんだろう。同じ出待ちでも決して宝塚劇場の出待ちと較べてはならないのである。国技館が華やかなのは正面に何本も立てられている各力士の幟だ。まるで大漁旗が立っているようで、何とも華やか。確か、そんなお店で染めるんじゃなかっただろうか。把瑠都のものを見付けて喜んで写真にする。
 これを通り過ぎると国技館の向こうに、この辺らしくないビルを見る。ビルの上の方に何と書いてあるのかと思って目をこらすと、なんだ、docomoだ。NTTはどこにいっても、何とも場違いな感じのビルを建てる。なにしろ、このあたりはちょっと先に行くと安田庭園がある。安田庭園に入ったひとはそんなものを見たくもないだろう。すっかりぶちこわしだ。浅草寺がビューホテルや今三菱が建設中の37階建てのマンションに苦情を述べる気持ちがわからんでもない。
 安田庭園は名前からもわかるように明治になって安田善次郎が入手した岡山池田公の屋敷を東京に寄贈したものだという。近所に今でもある安田学園ももちろん安田善次郎が設立したものである。安田善次郎といったら、彼の名前が鶴見線の「安善」という駅の名前になって残っている。もちろん安田財閥安田善次郎である。
 蔵前橋までやってくると、丁度夕陽が沈む頃で、川面がキラキラ光る。そういえば今日は雲がまるで寄せる海の波のように見えていた。水、雲、夕陽とくれば気持ちが良くないわけがない。見とれていると突然足下から轟くように音が湧きだしたかと思ったら水上バスだった。ここらあたりまで来ると、大分疲れてきた。やっぱり日頃の歩きが足りないことを痛感する。蔵前橋を渡って、かつての蔵前国技館が建っていたところにやってくると見慣れないビルが建っている。なんだか民間の会社のビルのような大胆な色だけれども、どうも造りそのものは公的機関のビルを匂わせる。色が変わっていて、反対側から見ると、東京都の銀杏の葉っぱのマークがついていたから、やっぱり東京都のビルなのかも知れない。ついこの前まで駐車場になっていたような気がする。
 先ほどノートをお願いしてあったお店まで戻ってきて戴いて帰る。結局今日は10,800歩ほど。多分6.5km程の散歩。