私が大学に通っていた頃、私のようにどこかの会社員になるしか生きる道はないなぁと思っていた遊び人学生にとっては、大学を中退するなんてとても考えられなかった。とにかくどんな事してでも良いから卒業して、金を稼ぐ術を簡単に得るには会社員になることだと思っていた。
国家公務員になるには勉強してよい成績を取りながら試験に受からなくてはならないし、地方の公務員になる積もりはなかったし。そうかといって自分の力だけでクリエイティブで、文化的なことにうちこんで生活の糧を得るほどの才能があるとはとてもとても思えなかったし、しっかりした指針を自分の心に確保するほどの真剣さを持ってもいなかった。要するに人生に対して実に怠慢だったのである。
そんなしょうもない男の周りに、自分ひとりで世間を見て歩きながら何が大事なのかを見極める術を少しずつ手に入れて、今やしっかり地に足をつけて若者達や周辺の人たちに発信し続けている人がいたこともある。
学校にいる場合じゃないんだと学校を辞めて、ものを書くことを勉強し直していった人もいる。しかし、私にはそういう選択肢を自分で見付ける力がなかった。そんな勢いで社会に出ちゃったんだから、ろくなことをしてこなかった。今から考えると学生時代にそんな力をつけることを何も指向しなかった。だからつい、若者に云いたくなる。わが身振り返るものだから。振り返らない方が良いかもな。
