ほぼ足りてまだ欲 その先

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モルモン教


 もちろんウィッキペディアなんかで検索すれば直ぐさまモルモン教自体がキリスト教の姿をとっているように見えるけれどキリスト教とは殆ど相容れない白人至上主義的人種差別新興宗教であることがよくわかる。しかし、そこまで調べる気もないし、調べる環境にない人が大半だから、殆どの日本に暮らす人たちはモルモン教徒であるということがロムニーにとって、そして共和党員にとって何を意味しているのか、という点については多くは語られない。
 ウッディ・アレンが作った「人間万歳(原題 Whatever Works)」という映画を偶々WOWOWでやっていたので見ていたら(映画館でも見たはずなんだけれど)その中で「Mormon」に言及する場面が出てきた。日本語のスーパーではそこが「一夫多妻主義者」とされていた。字幕担当者は相当迷うんだろうか。それとも彼らの間ではもうしょうがないからこれで行くとでもいうことになっているのだろうか。とても限定的な表し方である。
 彼らの本拠地、まぁ彼らがテンプルと呼んでいるんだから大本山といっても良いのかも知れないけれど、それはユタ州Salt Lake Cityにある。あのオリンピックが開かれた街でユタ州の州都である。オリンピックのおかげなのか、今のモルモンの集会堂はとんでもなく大きなものとなっていて、有名なモルモン・タバナクルという100名以上いるかも知れないクワイアが大きなパイプオルガンの前に勢揃いしていてもそれがごま粒くらいにしか思えない程度に見えるだけの、驚くほど広い建物ができている。
 彼らの教組はある日裏庭で天からの啓示を受けたのだそうで、そこから始まっている。まぁ、詳しくはウィッキペディアを見て戴ければいいわけで解説はしないけれど、宗教としては人種差別主義として相当に異端である。アメリカの先住民も、アフリカから売られてきた人たちも彼らにとっては宗教的仲間ではなかった。それでもそれにこだわっていたらどんどん世の中に置いて行かれてしまうから、その度ごとにその時のpresidentが「天からの啓示を受けたので、明日から私達は彼らも仲間にする」と変更してきた。まぁ、フレキシブルだといえばいえないこともない。
 彼らは結婚する時に自分達は子どもを何人もうけると宣言する。それが実現できないと養子縁組をする。それは自分達のコミュニティを保全するためであって、そのためであれば、何人もの妻とそれぞれの間にできた子どもとも大人数で同居する。それもこれもつまりはコミュニティーを途絶えさせないためであるし、それをしないで、男女の契りを結ぶことをきつく戒めて、新天地を求めて欧州から新大陸へ移ってきた宗派の中には、そのまま廃れてしまったものもある。
 しかし、米国の一州として加わる時点で、ユタ州は今後一夫多妻家庭の構築はこれをやめるんだと宣言して正式な州となった。しかし、それは表面的な話であって、私が初めて訪ねた1979年時点でもやっぱり目立たないところに大きな、まるで城のような家を散見することがあったけれど、それはすべてそうした大家族の家だった。
 だから、ある意味養子縁組についての抵抗は非常に少ない。ある家に行ってそこの小学生の子どもと話してきたら、その子がごく自然に自分は養子なんだよといったのを思い出す。
 私はSalt Lake Cityだけがモルモンの街なのかと思っていたけれど、実はユタ全域にわたってモルモンがいて、周辺の各州にも拡がっているのだそうだ。広尾にだってテンプルがあるくらいだから、その布教活動は年季が入っている。ひと頃東京では二人連れだって「英語の勉強に来ませんか?」といって声を掛ける青年達を見かけたものだ。それをきっかけに勧誘をしていた。彼らは必ず布教に出なくてはならないことになっている。
 このモルモンの活動を勉強して日本でも大きな宗教団体を発展させた人というのがいるのだという話はSalt Lake Cityでも聞いたし、日本に帰って来てからでも知ることとなった。なるほど、こういう具合にすれば概ね人は祈伏されてしまうんだなと勉強になった。
 カソリックから迫害されて新大陸にやってきたのはいわゆるプロテスタントの人たちだけではないのだけれど、新大陸でこれほどの偏見を抱えた、これほど大きな宗教団体が構築されていることは一度じっくり考えて見る必要がある。しかし、アメリカ国民が果たして「モルモン教徒の金持ち候補」を大統領として選び出すのだろうかと未だに信じられない気持ちだ。今年はこの観点で共和党の大統領候補の戦いを見ている。