ほぼ足りてまだ欲 その先

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火事

 正月早々、有楽町の駅の直ぐ脇に残っていた古くからある一画から火事が起きて、新幹線を止めてしまって大混乱が起きた。
 不思議に思うくらいにそこだけ昔のまま残っていたところだ。果物屋、中華そば屋、パチンコ屋、釣り道具屋が集まった三角地帯で、私が子どもの頃からそのまま残っていたところだった。イトーシアというやたらと新しいビルが建ったときになぎ倒されてすっかりなくなってしまった一画も同じようだった。あのあたりは学生時代の私にとっては安い、早い食い物屋が散らばっていてかなり重宝したものだ。駅から日劇に抜けるときは燃えてしまったブロックをすり抜けるような妙な路地があって、その角では天津甘栗屋の小さな小屋のようなものがあって、いつも燻されるような匂いがしていた。そこをしょっちゅう通っていた記憶があるのだけれど、今になって考えてみると一体、なんであんなところをしょっちゅう通っていたのだろうか。通勤する訳でもないし、学校があるはずもない。それなのに、あの通り抜けはしょっちゅう通っていた記憶がある。日劇がマリオンとなり、イトーシアができてからはすっかり通ることがなくなった。
 初めて通ったのは多分中学三年生の時のことで、大森の中学校から、有楽町まで京浜東北線で来て、数寄屋橋から都電に乗って築地の印刷屋さんまで中学新聞のことで通った頃だろう。
 この火事をきっかけにあの一画も全部綺麗さっぱりなくなって見たこともないビルになってしまうのに相違ない。そうして良いことも悪いことも、私の過去がすべて綺麗さっぱりこの世からなくなってしまうんだろう。そして私になんの縁もゆかりもない人たちが私がこの世にいたことすら知らずになんということもない日々を送る、ということになるのだろう。