東京電力福島第一原発の護岸近くの地下水が放射性物質で汚染されている問題で、東電は高濃度の放射性ストロンチウムを検出しても「分析中」として、長らく公表してこなかった。未公表にしてきた値の一部は、東電が見込んでいた値の約10倍もあり、都合の悪い数値は明かさないのでは、という疑念を招く。
東電は、定期的に各所で地下水をくみ上げ、セシウムやストロンチウムなどの濃度を監視している。
特に問題なのは、2号機前の二つの地点の値。東電は7月5日にくみ上げた水で1リットル当たり500万ベクレル、8月8日の水では400万ベクレルという高濃度のストロンチウムを検出した。
ところが、ストロンチウムも含めたベータ線を出す物質全体の濃度は、90万ベクレル程度だった。90万ベクレルという値が正しければ、ストロンチウムは半分程度の40万ベクレル前後になるはずで、東電は「ストロンチウムの値が高すぎる。計測が間違っている可能性が高い」と勝手に解釈して公表しなかった。
原子力規制委員会の作業部会で「ベータ線を出す物質の測定は誤差が大きい。こちらを過小評価している可能性もある」と指摘され、東電は計測に問題がないかどうかを確認。その結果、基本的に計測に問題はなく、ストロンチウムの値は当初の東電の計測値で正しいと分かった。
6.7の両日に公表された東電の資料で、検出されたストロンチウムの値から計算すると、2号機前の二地点では、ベータ線を出す物質の濃度は公表値よりずっと高い可能性がある。
東電は取材に、ベータ線を出す物質の測定では、高濃度汚染水の場合、全てのベータ線を計測しきれず濃度が大幅に低くなる「数え落とし」が起きる可能性が高いことを説明した。 (山川剛史)(東京新聞2014年2月8日 朝刊)
あれもこれも。