ほぼ足りてまだ欲 その先

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訃報 三代目円歌

 本名中沢円法(なかざわ・えんぽう)ということになっているけれど、これは得度名で本当は信夫。読売新聞が85歳と書いているのに、他の新聞が88歳と書いているのには理由があって、空襲で戸籍が消失し、提出し直した祖母が間違えたため本当は88歳だが、戸籍上は85歳だとウィッキペディアに書いてある。
 円歌というと私たちの世代は狐顔でかすれた声で女性を演じる新作落語の二代目円歌で、彼のことは歌奴として認識していた。今の林家正蔵を私が未だに「こぶ」というのと一緒で、未だに円歌という名前に納得できていない。
 その”歌奴”の円歌の弟子に小円歌という女性の演玉師がいて、これが彼と違って大柄な女性。今、寄席で三味線抱えて唄ってみせるのは彼女と柳家小菊の、多分二人だけだ。
 ”歌奴”の円歌は何しろ岩倉鉄道学校を卒業して、新大久保の駅員だったというのが売りで、その話と、授業で教科書を読めと指名されて吃音だったから「山の、アナ、アナ、アナ・・・」と繰り返したという噺しか聞いたことがない。あとは今の自分の家が後妻の両親を入れて6人の爺婆が暮らしているという噺だった。
 それにしては小円歌にしろ、女性で初の真打ちになった歌る多を育てたというのは私の中では意外で、驚いたものだ。花柳界にしても、相撲の世界、寄席の世界は良くわからない。そりゃぁ普通の(普通の意味が良くわからないけれど)会社員の世界と、あっちの世界は根本的に違うんだからわからなくて当たり前だろう。彼らの世界ではいわゆる「義理」の世界があってこそ社会が回るように見えるけれど、こっちはそんなことしていたら気疲れして卒倒しそうだ。
 歳をとるに従って社会から徐々に退出していかなくちゃ、そりゃ大変だよ。
 話は違うが、三遊亭小円歌は生まれは浅草で、如何にもそうらしいバタバタがうなずかせるが、柳家小菊は府中の出身にして都立武蔵高-早大文だから、高座も全然違っていて、なんだかとりつく島がない。彼女のことをいじる人が誰もいないのは、やっぱり彼女の旦那ってのが演芸評論家の吉川潮だからだろうか。彼は私と大学が同期で、在学中にどこかであった記憶はあるが、彼は多分知らないだろう。