ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

国立演芸場

 とても久しぶりに国立演芸場に行った。柳家小里んの噺を聴けるというので前から行く気だったのだけれど、その上に今月の中席の後半は四代目江戸家猫八襲名である。今回の襲名披露についてはこれまでチャンスがあればどんどん宣伝させて貰ってきたし、ご本人にもお会いしたことがあるので、一度は襲名高座を拝見しておかなくてはと思っていたんだけれど、先月30日の浜離宮朝日ホールは完売でお伺いできなかった。
 国立演芸場は通常は昼の13時から始まるのだけれど、金曜日は昼夜あって、十日ほど前に気がついて電話するともう席があるのは金曜日の夜しかない。下手側であれば前から3列目が取れるというのでそこをお願いしてあった。実は金曜日の夜というのは国立演芸場では一番客入りが悪い。なにしろ他の三つの寄席(もうこれだけしか寄席がない)は繁華街の中にあるけれど、こっちはこんな人が歩いていないようなところにぽつんとあるんだから、花金、特に年末の忘年会のピークであるこんな日はがらがらなんじゃないかと思っていた。
 私たちは開場するやいなや弁当を使い出し、前座の志ん坊が「元犬」を張り切っている頃は後ろの見えない私にもすぐにわかるほどのがらがら状態。「焙炉」って言葉はもうそのまま使うのは無理じゃないかと思う。
 桂才紫は『平林』。この噺ももう随分長いこと聞いていないなぁと。このめくりの文字を見るといつも柳家紫文を思ってしまう。柳家〆治は声も出ていないし、どこか身体が悪いんだろうか。ここまで来て連れ合いはみんなが前座噺ばっかりなのは今日が襲名披露があるからなんだろうねぇという。いつもの国立よりは時間が短くなる道理だものねぇ。〆治の噺がなんだったのか、今となっては思い出せない。結城たかしというギターを抱えた芸人が出たんだけれど(多分代演?)こりゃいけない。どうしちゃったんだろう。思わず下を向いてしまうというものだ。可哀相だけれど。プロフィールは凄い。
 志ん橋さんは前回(それがいつだったのか思い出せないけれど)よりは面白い「居酒屋」だった。この人の口の回りからしたら酔っぱらいの話は向いているんだろうなぁ。
 お待ちかねの柳家小里んは私たちと同じ歳で連れ合いの実家は彼が住んでいるのと同じ町内で小学校が一緒だった。昔から近所で見ていたし、子ども同士も同級生だった。しかし、私は口をきいたこともないし、見かけても面識はない。しかもこれまで高座を見たことがない。もう一度じっくりと噺を聞かなくちゃならない。出し物は「睨み返し」でさすがに先代小さんの弟子で実力派。実に上手い。しかし、連れあいがいう。へらへらして来いとはいわないけれど、もう少し楽しそうに出囃子に乗って出てきて貰いたいと。お愛想なんかつかったらそりゃ損しちゃうといわんばかりだものねぇ、確かに。
 仲入りでトイレに立ってみると場内はもう満員である。こうなるとトイレだってそうそう簡単に入れないのはわかっているから下のトイレに直行する。
 うんちく漫才の大瀬ゆめじ・うたじは楽しく割り箸の小ネタを仕込ませて貰った。この味は好きだ。うたじが私の知り合いにそっくりで笑える。
 鈴々舎馬風はいつものやつ。ここは襲名披露にあわせて金馬、圓蔵、圓歌が交代で出演。休演だからって現小さんやら木久蔵親子、現正蔵・三平兄弟の悪口満載。面白くないねぇ、こういう楽屋落ちの話は。だから馬風圓歌は好きじゃない。
 今日のめっけものはさっきの「ゆめじ・うたじ(テレビではどうかと思うけれど、私としては好き)」と手品の「ダーク広和」で、彼の手品は小ネタの連続なんだけれど、マギー司郎グループとはいまいち違う洒落たステージでこのセンスは好きだ。
 さて、トリはもちろん今日の主役の四代目猫八。幕が上がるとなんの前触れもなにもなく本人登場。「待ってましたっ!」の声。実は私。二代目があの木下華声というと場内から、「えっ!」の声少々。この会場の年代からいったら木下華声を知らないはずはないけれど、多分「ま、まさかあの?」という疑問を胸に反応しなかった人たちがたくさんいそう。高座の上の猫八は本人よりも大きく見える。そして鳥の知識は生半可じゃないことを見せる。烏骨鶏比内鶏だのときの声って、あれは本当に違うの?最後にリクエストを取る。リュウキュウアカショウビンと一番前に座っていた子どものヤンバルクイナをこなして大団円だったけれど、こりゃ凄い。いつだったか鈴虫ばっかりせがんだ自分を恥じるばかりなり。
 はねてロビーに出ると、猫八さんの息子の岡田真一郎(ブログ)と彼の大学院の指導教授・萩原先生に遭遇。日曜日の日本橋丸善のサイン会で再会できることを約してお開き。
 連れあいと別れていつもの巣に今年のお礼を兼ねてのみに行く。
 ところで「国立演芸場開場三十周年記念 東西名人揃いぶみ 1979年3月 こけら落し公演」というCDがポニーキャニオンから10枚組19,800円で売りに出ているんだそうだ。