ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

BS1スペシャル

f:id:nsw2072:20210520035739j:plain:w360:left 夜中にトイレに起きた。するとトイレの扉が開いている。娘がいて「電球が切れた、どこかにない?」という。なかった。非常時用の手回し懐中電灯をグルグル回しながらトイレに入る。
 テレビをつけたら、NHK BS1で「アウシュビッツ 死者たちの告白」(こちら)という番組をやっていた。前編・後編を一挙に放送している。この時間に放送するドキュメント番組は全て再放送で、この番組も昨年中に二度放送されているらしい。番組の存在は知っていたけれど(またアウシュビッツか・・・)と録画の設定すらしなかった。しかし、知らないことだった。全編録画しておけば良かった。
 アウシュビッツガス室の存在はもう何度も聞いている。労働力として見込みのないユダヤ人たちは身ぐるみはがれて(シャワーだと云って)毒ガスで窒息死させられ、焼かれて川に捨てられた。しかし、ガス室への誘導も、その後の始末も、全てドイツ人の手ではなくて、犠牲者の同胞であるユダヤ人たちによってなされた。アイヒマンは戦後「自分は誰ひとりユダヤ人を殺してはいない」と主張した。なぜなら実際に手を下したのはユダヤ人同胞だからだ。
 そうしたユダヤ人を「ゾンダー・コマンド」と呼んでいる。彼等はその実態を隠してメモにし、それを収容所のバラック周辺に埋めて隠した。それが次々に発見されて、最先端技術によって修復されてきている。
 三人のゾンダー・コマンドの戦後を追う。
 驚くべきは、ナチスのやり口の巧妙さでもある。とにかく最後に手を下すのがドイツ人ではなくて、ユダヤ人の同胞だと云うことだ。ドイツ人から罪の意識を払拭出来る。自分は手を下していない。ところがドイツ人の几帳面さが今になって資料として出てくる。バラックの煉瓦のひとつにそうしたゾンダー・コマンドの一人が日付と自分の名前を掘り残していた。彼の名前はナチスが残した資料から見つかり、ポーランド東の端の村の出身者と分かり、その娘たちにそれが知らされる。
 ナチスのやり口の巧妙なところは、そうしたゾンダー・コマンドを欧州各地から連行されたユダヤ人の混成部隊にする。そうすれば言語も異なって連帯しにくくなり、互いを信頼出来ない状態に置くことができる。
 それでも、ゾンダー・コマンドは連帯をする方向へ動く。当時やはり英国へ亡命政府を構えていたポーランドは秘密諜報員を使って、ポーランド出身のゾンダー・コマンドと連絡を取る。そして、英国や米国に対して、実状を訴える。しかし、連邦軍は動かない。なぜか。当時、英国や米国には、多くのユダヤ人が亡命を果たしていた。その事実は私たちも良く知っている。戦後その人たちの多くは亡命先で功成り名を遂げた。しかし、現地では多くのユダヤ人が流入することによって現地の雇用状況を切迫化していると問題化していたことがあるという。番組ではそれで切り捨てているけれど、果たして本当に理由はそれだけだったのか、より深く知る必要があるかもしれない。
 西欧社会には長い長いユダヤ人排斥の歴史がある。それが影響を及ぼしていないとは俄には考えにくい。
 それでも戦争によって必ず引き起こされる民族間の軋轢というものは、平和時にはそれほどでもないけれど、混乱してくると、とんでもないことをしでかす。
 化粧品や健康食品のDHCの社長が自社のHP(こちら)にダラダラと書き連ねる民族差別を許す社会は必ず同じことをしでかす危険性がある。私たちは、私たちの社会がしでかしたことを必ず学習しないと、近い将来にまた同じことを犯しかねない。その点では、あのドイツ人が取り組む戦後の姿勢を参考にする必要があると思う。