ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

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写真は本文に関係はありません。

 日曜日の夕飯時といえば、わが家ではテレビがテレビ朝日になっている。なにかというと、「なにこれ珍百景」と「ぽつんと一軒家」だ。「なにこれ」は実にくだらなくて、金がかかっていなくて、ただの時間潰しなんだけれど、「ぽつんと」は非常に興味深く見ている。ところがこの番組の視聴率が実にわずかに「2%」なんだというのだ。もうマンネリだ、尋ねていくスタッフが馴れ馴れしくって不快だ、どうせ台本通りなんだろう、というような声が聞こえてくるそうだ。
 馴れ馴れしい、テレビ界独特の映してやるんだから多少のことは我慢しろ風なところがあるのは否めないだろう。しかし、私はこの番組を非常に興味深く見ている。なぜか。
 ほとんどの一軒家がかつては一軒じゃなくて、何軒かあったんだけれど、他の家は山を下りてしまったというケースである。経ってから100年近いという家もあるけれど、戦後ここに何軒か一緒に開拓に入ったという家も何軒かこれまでにある。そうした場合、多くが満州を主とした外地からの引き揚げ開拓であったりする。そんなことから、調べてみたことがあるけれど、全国にそうした引き揚げ開拓地が戦後のゴタゴタの中で作られた。ほとんどの場合が手つかずだった山林だ。時は戦後の材木不足で、杉を中心とした林業は多忙を極めた。ところが南洋材の輸入で日本の林業は大変に廃れてしまい、炭焼きも含めた林業はそれだけでは暮らせなくなった。現金収入を求めて出稼ぎに転職し、次々に所帯を畳んで山を下りた。気がついたら先代がほんの先日まで守ってきたこの家一軒になってしまったと、ほぼ私と同世代の老夫婦が語る。かつての話を聴くと、小学校、中学校は分校まで4kmを山道を通ったという。帰りは暗くなるから懐中電灯を持っていったというのを聴くと、それでも日本の国は今や隅々まで細いとは云え、道路が通り、そのほとんどが舗装されていて、電気が通っていることに驚く。
 そしてそうでない家は取材ができないのだから、放送されないんだけれど、登場する家は皆さんこの番組を見ていて、あぁ、とうとううちにも来たか、といって笑う。彼等のこれまでの苦労を見てくると、私は随分楽な人生を過ごしてしまったんだなぁと何だか申し訳ない気持ちになる。
 この番組に近いところで、「秘境駅」ものがある。こっちは実につらい。日本国有鉄道が労組対策も相まって解体民営化されてしまい、どんどん廃線の憂き目を見ているが、その寸前にある三セク等の鉄道線のほとんど利用者のいない駅を狙って人が来ないか見張る番組がある。本来鉄道は住民のための公的交通手段でインフラストラクチャーの最たるものであったのだけれど、「効率化」という名前の住民切り捨て、投資家利潤優先が大手を振ってまかり通った結果の報告のようなものである。この裏にはもちろん大規模自動車産業振興という政治家の「大人の事情」って奴がチラチラしている。資本主義社会の政治は金で動いている。

 昭和の歴史を浮き彫りにする「ぽつんと一軒家」はまだしばし続けて貰いたい。